俺の継子に呆れた件について【不死川実弥】

254 ページ12

*



普段Aさんと一緒にいる兄貴はそんな表情もするのか。やっぱり俺の兄貴は世界で一番優しい人だ。Aさんに対しては結構辛辣な言葉浴びせているけど、その裏にはしっかりと優しさがある。



「おい、A」

「はい、なんでしょうか師範」

「ちょっと面貸せェ」



あれ、俺なんかした？いや、Aさん、入れ替わる前に兄貴に何かしたのか？せっかくAさん演じるの慣れてきたってのに。


殺気が含まれた兄貴の表情に息を飲み付いていく。そのまま屋敷を出て歩くこと数十分。着いたのは甘味屋……？



「ど、どうしたんですか」

「あ？食いに来たに決まってんだろうが！」

「ソウデスカ」



中に入り、俺の分まで頼む兄貴を見つめる。どうやらここのおはぎが食べたかったらしい。結構洒落た店で、そのおはぎは恋仲限定のものらしい。………なるほど。



「ふふっ」

「何がおかしい」

「あ、いや、師範って案外可愛いところもあるんだなぁって」



顔を赤くして恥ずかしがっている兄貴を見てさらに笑うと兄貴が頬を掴んで「笑うんじゃねぇ。この頬千切るぞォ」と脅し半分で言った。


兄貴は結構Aさんを連れてこういうところにくるんだろうか。Aさんも甘味好きだし喜んで来そうだ。というかAさんと恋仲のフリをしてまで食べたいおはぎって、どれだけ好きなんだろう。



「前から思ってたんですけど、どうしてそんなにおはぎが好きなんですか？」

「……………初めて作ってもらったのがおはぎだったんだよ」



笑うなよ、と睨んでくる兄貴に、昔俺が初めて母さんと作ったおはぎのことを思い出した。それを食べる兄貴のあの時の顔を今でも思い出す。



「…………なんだか嬉しい」

「あ"？なんでてめぇが嬉しいんだよ」

「そ、それは…………ーーー師範が美味しそうに食べてるから！」




ちょっと無理やり感ある理由だけど、本当に俺嬉しいんだ兄ちゃん。



.

255→←253

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す