アクトレスの追憶 (2) ページ39
.
美しい容姿と才能を持ったAは、中学生になると更にその内気な性格が強くなっていった。それこそ、中学にはほとんど行けなくなるくらいだ。
一日中家の中に籠る娘に、両親は心配すると共にいつしか、希望を抱かなくなっていく。
「どれもこれも……私が駄目だから」
「それ違う！Aは駄目じゃないよ？」
その頃、唯一彼女と対等に喋ることが出来たのが、ユウという同い年の少女だ。彼女は決してお金持ち家庭の令嬢などではない。家から逃げ出したAとたまたまぶつかり、怪我をおわせてしまったことから仲を深めていったのだった。
ユウは全て気づいている。どうしてAがこんな性格になってしまったのか。
「プライド高いだけの傲慢なお嬢様の言葉なんて聞かないでさ、私の言葉に耳を傾けてよ」
「…………ユウ」
「Aは可愛いし頭良いし運動もできるし。Aのこと悪く言ってるやつらなんかより全然すごいから！」
ユウの懸命な励ましに、Aは心底嬉しそうに微笑む。この頃のAを、後に彼女は『純粋時代』と呼んでいるのだった。
そんなユウの語りかけもあり、中学1年生の夏。Aは約2年ぶりの社交パーティへの参加を決意する。正確に言えば決意させられた、だが逃げなかっただけ彼女の中では及第点なのだ。
そのパーティ会場で、彼女は運命的な出会いをするのだった。
「は、は………て、観月……Aで、す」
パーティの主催者の家の少年。同い年の異性に挨拶をするA。主催者の御曹司など、彼女にとっては恐怖の塊でしかない。顔を下げ、ビクビクしながら一礼する。
すると、返ってきたのは責め立てるような言葉ではなく、優しさに溢れたものだった。
「ふふ、そんなに怯えなくていいよ。よろしくね、Aちゃん」
「……っ！」
あまりの優しい声に驚いて、咄嗟に顔を上げたA。目が合った少年は、現実離れした美しい姿をしていた。そう、まるで………
「天使みたい…………」
「え？」
「……え、っご、ごめんなさい……！！」
言葉に出ていた。言葉にしてしまった。
Aは逃げるようにドレスで駆け出し、パーティ会場を出た。ぐるぐると回る思考の中で、自分のしてしまったことへの羞恥心だけが、彼女の足を動かす。
パーティで出会った少年の名前は………天祥院英智。大財閥の御曹司だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です！更新頑張ってください！ (2018年8月18日 16時) (
レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています！吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは？間違っていたらすいません！ (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます！初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います！ (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リッコ | 作成日時：2018年8月7日 17時
