【マギ】黒い堕天使 ��

第409夜 ページ19

廊下を歩いていると、前方に明かりが見えた。それはだんだんと近づいてくる。


………誰？


紅覇「Aじゃん。久しぶりぃ。」

貴「……紅覇。」


煌帝国の第三皇子、練紅覇だった。
相変わらず背は低いまま。私が見下ろす形になる。

蝋燭でお互いの顔を照らし合った。


紅覇「いつの間に帰ってきてたんだぁ。」

紅覇が驚いたように言う。そう思うのも無理はない。私が帰国する知らせなんて誰も受けてなかったもの。

貴「こいつに昨日無理矢理連れて帰らされたのよ。」

くいっとジュダルに親指を向ける。すると紅覇は口に手を当てて叫んだ。

紅覇「うわ〜！ジュダルくんったら大胆〜！」

ジュ「うるせぇ。」

ジュダルがガシガシと頭を搔く。本当に機嫌が悪いようだ。



紅覇「………なんかA、印象変わったよねぇ。すごく綺麗だよ。」

貴「本当？」

顔も体型も何も変わっていない気がするが……髪を切ったせいなのか。

ジュ「あ？ブスじゃねーか。」

貴「あんたは黙ってて。」

紅覇に持ち上げられたのも束の間、ジュダルの言葉で一気に落とされた。キッとジュダルを睨みつける。

紅覇「駄目だねぇジュダルくんは。女の子には優しくしないと。」

ジュ「はっ。これのどこが女………」

貴「ジュダル。」

紅覇「ほらほらぁ、Aもそんな怖い顔しない。眉間に皺寄ってるよぉ。」

皺は美容の大敵、なんて言われながら紅覇にグイグイと眉間を押される。



紅覇「それでさぁ………もう炎兄には会ったわけ？」

腕を組みながら紅覇が聞いてきた。
炎兄というのはこの国の第一皇子、練紅炎様のことだ。

貴「……………まだ。」

紅覇「だと思ったよ。僕から言っといてあげるからさ。」

やれやれと言ったふうに肩を竦めて紅覇が笑った。

貴「でも、失礼じゃないかしら。報告くらいは………」

紅覇「だって炎兄、Aにあたり強いじゃん。可哀想で見てらんないよ。」

紅覇から見てもそのように見えているのだから、やはり紅炎様は相当私を毛嫌いしているらしい。


貴「まぁ……嫌われてるからね。」

紅覇「いや？嫌いじゃないって言ってたよぉ、前に聞いた時には。」

貴「嘘。」

紅覇「本当。嫌いじゃないけど、中途半端な奴だから優しくしてやらないんだって。」

貴「中途半端…………」

いや、まあ全体的に私は中途半端な人間だと思うけど、紅炎様は私のどこを見てそんな事を………

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