仮面3 ページ5
「お帰りなさいませ、中也さん。」
今日もまた、朝に帰ってきた中原さんを出迎え、風呂に入ってからぐっすりとベッドで眠る彼を確認してから出掛ける。
ダイニングのテーブルに作っておいたパスタと出掛けてくる用件を伝える為のメモ書きを置いて……
中原さんと結婚して約1ヶ月、そして私が京都から横浜に来て1ヶ月経った今日、何時も着ている着物以外の洋服が欲しくて街に出た。
「何処に行こうかなぁ。」
地図を見ながら辺りをキョロキョロと見回す。
人混みは慣れている筈だと云うのに、未だ未だ判らない事だらけの初めての街を一人で歩くと云うのは、案外大変で心細くあった。
周りは複数の友人と居る人、親子連れ、カップルばかり。
私も本来ならば、中原さんと来るのが普通なのだろう。けれど如何せん、彼はポートマフィアの幹部、普通とはかけ離れた日常を送る人だ。時間の都合も合わなければ、私の買い物に付き合う義理など無い。
「あー、来るんじゃなかったかも。」
周囲に比例して私の孤独さが一層増し、一人である悲しみが込み上げてきた時―――
「おや、Aではないかえ?」
「紅葉様。」
「其の堅苦しい呼び方は好かん。紅葉で善いと会う度云っておる。」
私の目の前に顕れたのは花魁の様に実に華やかで綺麗な和服美女、ポートマフィア幹部の尾崎紅葉。
「も、申し訳ありません。では、姐さんと御呼びさせて頂きます。」
此方に来て間もない私を、色々と助けてくれている御方であり、中原さんの保護者の様な存在。
「全く、ソナタは相変わらず堅苦しいのう。」
口元を着物の袖で隠しながら微笑む姐さんの何と妖艶な事か。私も此ほどまでに色気があったのならは、中原さんとも上手くやれていたのか?
否、其れは無いな。
「して、Aは此所で何を?」
「嗚呼、服を買いに。
和服だけでは、何分不便な事も多くて。」
「成る程のう。其れに旦那は連れてこなんだのかえ?妻の服は、旦那の意見も重要じゃ。」
痛いところを突かれてしまい、ぐうの音も出ない。
「先程お帰りになられて、自宅で眠っております。かなり御疲れのようでしたので。」
笑って誤魔化そう。
疲れて眠っているのは事実なんだし、何となく、夫婦仲が上手くいってないのを勘づかれては成らない気がした。
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座敷わらし(プロフ) - 夕霧さん» 有り難う御座います! (2017年7月25日 20時) (レス) id: 3af3fdf8cd (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - とても面白いですね! 更新楽しみにしています! (2017年7月23日 1時) (レス) id: fb8453ace7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - きせつふう。さん» ありがとうございます!中々更新できていませんが、頑張ります! (2017年5月29日 22時) (レス) id: 087f4a5487 (このIDを非表示/違反報告)
きせつふう。(プロフ) - 続き気になります.....!更新待ってます!とっても面白いので頑張って下さい! (2017年5月26日 20時) (レス) id: 1841832f9e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 椿さん» 有り難う御座います! (2017年5月12日 19時) (レス) id: e75982502b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年4月20日 18時