梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ10)

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●八匹と八本ページ10

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平子丈という喰種捜査官と話してから、一日が経った。

空は晴れ渡っていて、雲一つない。

仕事場である美容室に着くと、先輩の橘京香(ﾀﾁﾊﾞﾅｷｮｳｶ)が話しかけてきた。

橘「あ、百鬼ちゃん！……ねえ……どうだった？」

『……え？』

橘「昨日、男の人に会わなかった？前に髪切りに来た…」

((…まさか、平子丈の事？))

『は、い…多分橘さんの言ってる人に、昨日公園で…』

橘「他には？」

『他？…あー、喫茶店で少し話しましたよ？』

橘「ふーん…そーぉ(￣▽￣)」

『…な、なんですか？』

橘「いやぁー…昨日ね？朝開いて直ぐに…男の人が来てねぇー……突然百鬼ちゃんのこと聞いてきて、今日は休みですって言ったら、そうですかって、ちょっと寂しそうな顔してたから、思わず百鬼ちゃんが休みの日によく行くって言ってた公園のこと話しちゃってねー？」
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『ちょっと、橘さん！勝手に、私のこと話したんですか！？』

橘「ごめんねー？でも、住所は言ってないから！」

『当たり前です！！』

橘「本当にごめんって(-_-;)……でも、きっとあの人、百鬼ちゃんのこと……」

『私が何ですか？』

橘「……いーや？なんでもー(￣▽￣)」

『……』
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((……なんで場所がわかったのかと思えば…橘さん…(-_-;)住所言ってなかっただけまだよかったかな…))

その時、さきほど橘の言っていたある一言に引っかかった。

((…あれ？さっき橘さん"平子丈が寂しそうな顔した"って言ってたわね…。あの無表情が…？橘さん、意外と鋭いからなー……一体何故？))

こういう事には鈍感な百鬼夜蝶は、用意をしながら頭を捻っていた。
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今日は仕事を早めに切り上げ、家に帰る事にした。

『お疲れさまでした－』

橘「また明日ねー」

外を出ると、相変わらず雲一つない空が夕日で赤く染まっている。

ふと、昨日平子に渡された傘を思い出した。

((そういえば…雨降った時用に持ってきてたんだっけ…))

あの時、相手は返さなくていいと言っていたが…

((なんか…悪い事しちゃったような…きっとあの後濡れて帰ったんだろうし……))

だが相手はあくまで敵。敵の本陣に堂々と乗り込むのは勇気がいる。

((でも…これを持ってるのは持ってるので……あーもう！！))

百鬼はため息をつきながらCCG支部に向かう。
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『芳村さん………貴方には迷惑かけないよう気をつけますから…』