梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ8)

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●六匹と六本ページ8

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公園の目の前にある喫茶店。

そこに一組の男女がやってきた。

女の方は、その場にいる誰をも惹きつけ、魅了する美しさがあった。男の方は、びっくりするほど普通、むしろ無表情すぎて異様な雰囲気をまとっていた。

男は女が席に着いてから座る。

平「…何をお飲みになりますか？」

『…じゃあ、ブラックで…』

((……意外と紳士的なんだ…))

男の行動に少し感心していると、男が話を切り出してきた。

平「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでした。平子丈と申します」

『私は、百鬼夜蝶といいます(^^)』

((……話って何？やっぱり、喰種に関して？目をつけられた？))

無意識に身構えてしまう。平子の口が少し動くのを見て、足が強張る。

平「……百鬼さんは……
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　どうして美容師になったんですか？」

『はΣ(ﾟДﾟ)！？』

平「え」

『え、ああ(^^;)もともと手先が器用な方でしたし、さっぱりした髪を見てると、こっちまでさっぱりした気分になれるので…(^^;)』

平「…大学も、そういう系統のところへ？」

『いえ、大学は上井の工学部に(^^)』

平「上井、ですか…工学部という事は理系ですよね？頭がいいんですね」

『当時の成績トップは、誰にも譲りませんでしたから( *´艸｀)』

平「……すごいですね」

『まあ、今じゃほとんど意味有りませんけどね(^^)』
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((……あれ？))

気付けば、どんどん話が弾んでいた。喰種の、"ぐ"も聞こえない。ただただ普通の会話だった。

((………一体何考えてるの、この人))

疑惑の念は晴れず、あっという間に夕方になってしまった。さらに

ﾎﾟﾂﾎﾟﾂ

『あ、雨！？』

平「そういえば、今日は夕方から雨の確率が上がると気象予報で言ってましたね…」

『…そんな……私……傘もってきてない…』

平「………よかったら、お送りしましょうか？」

『え！？』

その時、思わず出かけた"よろしくお願いします"という言葉を飲み込んだ。

相手は、喰種捜査官。接触に意味が無いとは考えられない。念には念を入れておいた方がよい。

『いえ(^^;)お気持ちだけで…』

平「では、どうぞ」

『？』

平子が渡してきたのは、シンプルな黒の傘だった。

『これは…？』

平「それを使って家まで帰ってください。返さなくて平気なので。それでは」

『え？あ、ちょ』

扉のしまる音が鳴り響く。