梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ49)

今日:21 hit、昨日:2 hit、合計:62,957 hit

●四十六匹と四十六本ページ49

・
・
・
・
・

平子がCCG支部に着くと、一人の男が平子の元の歩んできた。

平「…………篠原特等」

篠「…よう、最近調子はどうだ？」

平「…ええ、変わりなく」

篠「……そう、か……」

篠原はそう言いながら自分の顎を掻き、言いづらそうに話し始めた。

篠「………平子……例の件なんだが………」

平「……！」

篠原のその言葉に平子は息を飲む。

今まで避けていた事が、

現実が

平子の目の前に突き付けられる。

平「………アゲハの事ですか？」

篠「……ああ。………本当は急かすような事はしたくないが……最近喰種の活動が活発になってきてて情報が欲しいんでね…………何かわかっている事があるなら教えて欲しい」

平「………はい…………」

平子は少しの間の後口を開く。

・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・

ずっと前から、

何となくわかっていた。

百鬼の正体を。

それでも

百鬼の事を

愛していた。

一目見てから

何て美しい人だろうと思った。

話した後から

何て強くて優しい人なのだろうと思った。

笑顔を見てから

何て

悲しそうな表情をする人なのだろうと思った。

もっと

百鬼を知りたいと思った。

ずっと

このままの距離で

いれたら。

自分には百鬼は不釣り合いだ。

だからせめて

このままの関係でいたい。

でもあの事件後、

百鬼が自分からどんどん離れていくのを感じて

辛かった。

行かないでほしいと思った。

例え傲慢だと思われても

百鬼に会いたかった。

《……じゃあ、さようなら》

彼女が見せた最後の笑顔は

今までで一番

悲しそうだった。

そうさせたのは自分なのに。

人間は喰種を匿ってはいけない。匿えば、人間は罪に問われる。

喰種捜査官がそれを行うなど、もっての外だ。

どんなに頭がそう叫んでも

百鬼の傍にいたいと

心が叫ぶ。

例え罪に問われても

例え人間が自分を蔑んでも

例え孤独になっても

百鬼を

・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・

平「……申し訳ありません。まだ何も掴めていません」

平子のその言葉に篠原は少し間を置く。

篠「……そうか。………悪かったな、押しかけて」

平「いえ、こちらこそ申し訳ありません」

篠「じゃ、頑張れよ」

篠原の後姿を

平子はただ眺めていた。