梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ41)

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●三十九匹と三十九本ページ41

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平子は、資料で見た"百鬼"という解剖医について調べるためにCCG本部の資料室に来ていた。

平(…………百鬼………百鬼明弘………これか…)

おびただしい資料の中から、"百鬼明弘"と書かれた資料を取り出す。

その資料の中には、百鬼明弘の行った様々な研究について記されていた。

百鬼明弘はCCGにおいて解剖医を務めた。

主な功績としては、喰種の体内から完全な状態で赫包を取り出すことに成功。

同じく解剖医だった嘉納氏と共同で研究を行った。

約4年間勤務し、その後は行方が分からなかった。

しかしその8年後、大量の喰種の死体と人間の死体と共に百鬼明弘の死体が発見された。

調査の結果、百鬼明弘は大量の喰種と人間を用いて限りなく"理想的な"隻眼の喰種を創る実験を行っていたとみられる。

なお、この事は機密事項とする。

平(…………"理想的な"隻眼の喰種？……一体………)

その後どれだけ調べてもそれ以上の情報を得る事は出来なかった。

平(……………百鬼明弘の真意は…………CCG本部でも情報はこれだけか………)

平子は諦めて資料室を出た。

平(…………………百鬼…………夜蝶……………………彼女が無関係とは思えない…)

その考えに至った時、

胸の中に、何か重いものが落ちた気がした。

平(…………もし……彼女が"理想的な"隻眼の喰種、なのだとしたら………いや……まだそう考えるには情報が少ないか………)

考えたくもないその結末を、必死で否定する。

初めは彼女のその美しさに目を奪われた。

だが次第に

彼女の笑みに惹かれた。

初めのうちは何だか警戒されていたが

それも徐々に無くなっていった。

嬉しかった。

単純に。

平凡な自分にとって、

あんなにも美しくて輝かしい女性は不釣り合いだ、と

ずっと考えてきた。

そんな彼女が

自分の事を少しでも見てくれた。

ただその事が嬉しかった。

特別に距離を縮めるのではない。

ただ少し近づいた所にいれればよかった。

彼女が美容室から去った時、

もう会えないと思った。

だが、会えた。

彼女の事を

知っていたと思っていた。

何も

知らなかった。

平凡だが、理性的なその頭は

真実を受け入れるしかなかった。