梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ32)

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●三十匹と三十本ページ32

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『……ﾊｧ……ﾊｧ…くそっ……』

真戸のクインケで斬られた所からは、まだ血が流れている。

反応が遅れたせいで、深く傷を負いすぎたようだ。

『……ﾊｱｯ……』

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笛口リョーコが殺されてから二日が経った。

傷を癒そうと自宅でずっと横になっていた為、日付が変わったころには痛みもすっかり無くなっていた。

あんていくに、今日は休むと連絡を入れ、一日ゆっくりすることにした。

服を着替えてから、新聞を読む。

その中に、気になる記事があった。

『……………あれ………この顔……』

それは一つの顔写真。記事には、〈20区で喰種捜査官が死亡〉と書かれていた。

((…この顔は……あの時の……))

そこに写っていたのは、リョーコが殺された現場にいた喰種捜査官の一人。

新聞には詳細が書かれていなかったので、インターネットを使って調べた。

〈20区文月通りインター横路上にて草場一平三等捜査官(26)が、喰種によって殺害された。草場三等を殺害した喰種は兎の仮面を被っており、喰種対策局はその喰種を「ラビット」と命名。〉

『………うさぎ………？』

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あんていくに行くと、芳村に話があると呼び出された。

『………』

芳「……夜蝶ちゃん」

『………はい』

芳「……君は、何をしたかわかっているかい？」

『……ええ』

芳「……20区の白鳩に、喰種アゲハの姿を確認された。それが、一体どういう事か……」

『………ええ』

芳「……そうか。…………夜蝶ちゃん」

『…はい』

芳「君がそれでもいいと言うのなら、私は構わないと思っている。ただし、あまり無茶はしないでほしい」

『……わかってます…』

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キッチンに入ると、董香の姿があった。普段通りに見えたが、よく見ると右腕に雑に包帯が巻かれていた。

コーヒー豆を棚上にあげようと腕を上げた瞬間、

ト「……っ！」

『おっと』

ト「…夜蝶さん！」

董香の落としそうになったコーヒー豆を受け止めると、董香はとても驚いたように目を見開く。

『大丈夫？』

ト「だ、大丈夫！大したことじゃないから！」

『……そう』

ト「…もう行かないと……」

董香は走り去るようにキッチンから出ていった。

『………』