梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ31)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:62,942 hit

●二十九匹と二十九本ページ31

・
・
・
・
『………』

何も話さない。

何も考えない。

ただ、無心に攻撃を繰り出す。

亜「……くっ…」

真「まだまだぁっ！！！」

『……』

初めは、どちらが有利という訳ではなかったが、次第に結果が見えてきた。

真戸は長年の経験からか意外ともっているが、

『……』

ｶﾞｷｨﾝｯ!!

亜「……っ！！！」

亜門の手にしていたクインケが宙を飛ぶ。

亜門が怯んだ瞬間を見逃さず、一瞬で間合いを詰める。

そのまま亜門の巨体に蹴りを入れる。

亜「ぐはっ……！」

真「亜門君！」

そしてふらついた巨体をそのまま地面に叩きつけ、赫子でとどめを刺そうとした。

『……』

亜「……うっ……くそっ…」

こいつを殺せば、リョーコの仇が取れる。

こいつを殺せば、アサキの仇が取れる。

こいつを殺せば、ヒナミを守れる。

こいつを殺せば――――――
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
平〈また、会ってくれるか？〉
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
『！！！！！！』

ふと、頭の中に

彼の顔が浮かんだ。

『………っぁ』

その躊躇った一瞬

ｸﾞｻｧｯ!!!

『うぐぅっ………！！！！！！！』

背中から鮮血が噴き出す。

『……くそっ……』

亜門の上から飛び退き、二人から距離を取る。

『………』

・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
もし、このまま

二人を殺したら

もしかしたら

あの人に会えなくなるかもしれない。

わからないけど、

そんな気がした。

そんな考えが、躊躇いを生んだ。

殺す上で、躊躇う事は許されない。

それは自分の死を示す。

((……ああ………駄目だな………))

背中から出ていた美しい蝶の羽の形をした赫子は、すぐに消えた。

亜「……？」

『………ごめんなさい……リョーコさん……アサキさん……ヒナミ……』

百鬼は一言言い残し、そのまま飛び上がって姿を消した。

亜「！！ま、待て！！」

真「…亜門君………我々も引くとしよう…

　 ……それから………」

真戸は、先ほど百鬼が傷を負った場所に立つ。

そこには、飛び散った鮮血が残っていた。

真「……この血も……採取しておこう」