梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ28)

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●二十六匹と二十六本ページ28

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店に買い物袋を置いて来た後、平子を待たせている場所に戻る。

『…こっちよ』

平「…」

言ったとおり、自宅に平子を連れて行き、部屋の中に入れる。

『狭いけど、あがって？』

平「…ではお言葉に甘えて……」

平子はあがると、部屋の中をきょろきょろと見渡した。

平「…」

『…あ、あんまり部屋綺麗じゃないから………』

平「あ、いや、そういう事じゃ……」

そう言うと平子はそのまま話さなくなった。

『…とりあえず、コーヒーでも飲んでって』

沈黙に耐えられなくなり、急いでキッチンに向かう。

((……あーあ……なんで、この人を家に入れちゃったんだろう……へまをしないようにしないと……))

コーヒーを淹れながら色々考える。

『……はい、どうぞ』

平「ありがとう」

平子はコーヒーを一口飲むと、驚いたようにカップから口を離した。

『……不味かった？』

平「……いや…………とても、美味しい……喫茶店で飲むコーヒーより……」

『そう？…なら良かった(^-^)』

平子の向かいの席に座ると、平子の行動を注意深く観察する。

自分の本性を知られるわけにはいかない。

平「……百鬼さん…」

『……え？あ、何？』

平「……俺の顔に何か付いているか？」

『あ、いや違うの！ただボーっとしてて…(^^;)』

平「……そうか…」

そのまま平子は黙り込み、再び沈黙が流れた。

今日の平子は普段より歯切れが悪い。反応はいつもに増して薄く、ぼんやりしている。

((………やっぱり、あの店でのことが……))

平子が、こちらを"人間"として見ているのか、それとも―――――

もし、気づかれているのなら

平「…今日はわざわざありがとう。コーヒー、とても美味しかった」

『いいの(^-^)前にお世話になったから、今までのお礼』

平「……」

外は少し日が暮れかかっていた。

『…そういえば、どうして20区に？』

平「……特に理由は無い」

『…そう…』

平「……百鬼さん」

『なに？』

平(……手遅れになったら、意味がない……)

平「また、会ってくれるか？」

『え…』

平「ただ…少し話すだけでいいから…また会ってもらえますか？」

急に敬語になった平子の顔は、いつもより真剣な顔をしていた。

『……メアド』

平「？」

『時間がある時に連絡する』

その時の平子は、今までの中で最も嬉しそうな表情をしていた。