梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ22)

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●二十匹と二十本ページ22

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月山があんていくに来た日、妙に胸騒ぎがした。別に何かがあったわけではない。ただ、月山の言った言葉が気にかかった。

月〈……貴女のその心を掴む人間……どんな味がするのか…〉

ただの冗談かもしれないが、月山は冗談を本当にする男だった。

((……平子さん…))
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気が付けば21区のCCG支部に来ていた。

喰種捜査官らしき人間がその中を出たり入ったりしている。

自分の立場も忘れて建物の中に入る。ただ安否を確かめたかった。

『すみません、平子丈さんはいらっしゃいますか！？』

「平子上等なら、今は外出していらっしゃると思いますが…」

『……そうですか……』

安否を確かめる事も出来ず、建物から外に出る。

不安でため息がこぼれた時だった。

平「……百鬼さん？」

『！！』

倉「あれ、この間の美人さん！」

『…平子さん…！良かった…』

平「どうかしたんですか？」

『いや……別に…』

そう言いながら平子に近づき耳打ちする。

『……敬語……止めてくれるって言ったでしょ…』

平「……あ……」

『ごめんなさいね、ほんとに何でもないの(^-^)』

平「百鬼さん…」

『じゃあ、また！』

早歩きでその場を去る。

安否が確かめられれば、それでよかった。

長く話す必要なんてない。

そう言い聞かせて逃げるように去ろうとした。

が

ｶﾞｼｯ

『！！』

平「……どうして」

『…え？』

平「どうして逃げるんだ」

『…っ！』

平「………」

『……は、なしてっ！』

ﾊﾞｯ

平「！…百鬼さ――」

平子の制止も聞かずに、今度は全力で走って逃げた。

辛かった。

彼の声を聞くのが。

安否を確認したかっただけだ

そう思わなければ、

喰種として

喰種になってしまった自分を

受け入れる事ができなくなる。

((………会いたかったなんて…))
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百鬼が去った後、平子はそこに立ち尽くしていた。

倉「……タケさん、結局言ってなかったんすね」

平「……」

黙っている平子に対し倉元は溜息をつく。

倉「……言わなきゃ、どこかに行っちゃいますよ？」

平「……」