梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ21)

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●十九匹と十九本ページ21

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あんていくに行くと、久しぶりに見た人物に会った。

『……月山君』

月「ああ……また見ないうちに美しくなったようだ、Ms.Papillon？」

『…その呼び方止めてくれる？』

その場の空気が一瞬で凍り付く。二人の間で静かに火花が散っているようだ。

あんていくにいる客は運の良い事に全員喰種だったため、大したことにはならなかった。

それでも二人の威圧感にその場の誰もが冷や汗をかいた。

『……何してるの、ここで』

月「勿論珈琲を飲みに来たのさ、mademoiselle？……できれば貴女の珈琲を飲ませてくれるとありがたい」

『………………飲んだら帰りなさい』

月山はこちらの言葉に全く恐れる様子も見せず、終始イケメンスマイルを見せている。

『……ﾊｱｯ』

カウンターに入ると番をしていた古間がこちらに目配せしてくる。

古「夜蝶ちゃん、頑張れ」

『…ﾊｱｯ』
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作ったコーヒーをカウンターに置き、月山が飲み干すのを眺める。

『……飲み終わった？』

月「…ああ、実に素晴らしい」

『なら、帰って』

月「その鋭い視線さえも美しい……」

((…本格的にキモイ…))

『…なんだか、妙に機嫌いいみたいだけど』

月「実は、とても興味を持っているモノがあってね……貴女にとてもよく似た香りがするんだ…」

『……金木君ね』

月「…That's right…あの香り…一体どんな味がするのか…！」

そう言う月山の顔が狂気に満ちていく。

『彼に手を出すのは止めておきなさい』

月「…もう、遅い」

そして月山の表情が変わったのがわかった。

月「そうだmademoiselle……、面白い噂を耳にしたんだが……」

『？』

月「とある喰種が、白鳩の人間と関わっている……という、ね？」

『！！………誰から聞いた』

月「…僕の情報網は貴女がよく知っているはずだが？」

『…帰りなさい』

追い立てるように、空のカップをしまい、月山を睨み付ける。

その様子に月山は満足そうに微笑む。相変わらずねっとりとした微笑み方だ。

月「…邪魔したね」

月山は店を出る為席を立ち入口の前まで歩く、が立ち止まってこちらを振り向いた。

『……』

月「……貴女のその心を掴む人間……どんな味がするのか…」

『手を出したら殺す』

月山のその言葉に百鬼は怒りが爆発し今までにない威圧で月山を睨み付ける。店に人がいるのなんて全く気にしていない。

月「…失礼」

『……』