梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ20)

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●十八匹と十八本ページ20

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暫し沈黙が続いた。

沈黙を破ったのは、平子の方だった。

平「……さっき、少し嬉しかったんです」

『…え？』

平「…百鬼さんって、あまり人を頼らないでしょう？」

『…そうかも…』

平「だから、嬉しかったんです。百鬼さんが、俺を頼ってくれた気がして」

『！』

平子は相変わらずの無表情だったが、少しだけ表情が優しい気がした。

平「……まあ、俺が勝手に思っただけですけど」

『…』

平「…コーヒー、おかわりいりますか？」

『え…あ…はい…』

その後も、二人は静かにコーヒーを飲み、ただその沈黙に身をゆだねていた。

時計を見ると、もう夜になっている事に気が付いた。

『……もうこんな時間…』

平「すみません、長い間引き止めてしまって」

『いえ、こちらこそ……コーヒーまでいたただいて…』

平「駅まで送ります」

『…ありがとうございます(^-^)』
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この会話も、会うたびにしているような気がする。お互い謝って礼を言って駅まで送ってもらう。

知らない間にここまで当たり前に送ってもらうようになったのだろうか。

雨の止んだ帰り道、ふと思って口に出した。

『……私達って、よく謝ってますよね』

平「…は？」

『謝って、礼を言って……』

平「……」

『…いっそ、謝らないようにしませんか？』

平「え？」

突然の提案に流石に驚いたのか平子がこちらを向く。

平「それはどういう…」

『……敬語も止めるのはどうかしら？』

平「……はあ……」

言ってから、とんでもないことを提案したことに気が付き少し焦る。

『…あ……いえ、別に変な意味じゃ……すみません―――』

平「謝らなくていい」

『へ？』

驚いたことでとても間抜けな声を出してしまった。

平「……こんな感じ…ですか？」

『……！』

平子が自分の言った提案に乗ったのだと理解し、少し嬉しくなった。

『……敬語、止めるんでしょ？(^-^)』

平「…！…そう…だな」

こちらの指摘に少し戸惑った平子を見て、自然と笑みがこぼれた。

『…ﾌﾌｯ、平子さん動揺した(^-^)』

平「…！からかうな…」

『ﾌﾌﾌｯ、そうね』

平「…ﾌｯ」

平子が笑ったのを見て、気持ちが更に高ぶった。

すっかり暗くなった路地で、二人は笑った。

幸せだった。

自分の宿命を忘れ、ただ、その幸せに身を寄せていた。