梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ19)

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●十七匹と十七本ページ19

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突然の出来事に、平子は勿論、本人も驚いていた。

平「…！百鬼、さん？」

『……』

平「…あの、本当に大丈夫ですか？どこか怪我でも…？」

『……』

何も言わなくなった百鬼が心配になり、肩を触ると、驚くほど体が冷えている事に気が付いた。

平「！……とにかく、温かい所に行きましょう。風邪をひいてしまいます」

『……ぃ』

平「え？」

突然百鬼は平子から飛び退き叫んだ。

『ごめんなさいっ！！』

平「…！？」

顔を見ると、百鬼の顔はひどく真っ赤になっていて、少ししてうつむいてしまった。

平「あの…」

『突然抱き付いたりして…………すみません、変な事して…』

だんだん声は小さくなり、終いにはまた話さなくなった。

平「……いえ、俺の事は気にしないでください……それよりも、早く温かい所に行きましょう、体が冷えてます」

『大丈夫です…これくらい…失礼します』

平子はそのまま大雨の中に飛び出ようとする百鬼の腕を掴み、引き戻した。

『！』

平「傘も無しに出たら、風邪を引きます。……俺の家、ここから近いので寄って行ってください」

『…えっ』

平「……あ、別に…その…変な意味では…」

珍しく平子は動揺し、視線がさまよっている。

ここで、帰らなかったら、きっと喰種としていけないことなのだと

頭の中では理解していた。

だが

もう少し、この温もりに触れていたいと

心が感じた。

『……お邪魔でないなら…失礼します…(^-^)』

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平子の家は、きわめてシンプル。男部屋と言ったらこんなものかもしれないが、それでもシンプルな方だろう。リビングには小さめのテレビに低めのテーブルと書類を置くための棚。目立った置物は無く、装飾も無い。唯一の飾り物は平子の祖父母らしき人物との写真。

『…シンプルですね』

平「すみません…何もなくて」

『ああ、いえ！いいじゃないですか、片づけるものが少ない方が楽ですし』

本心を告げただけだった。だが、少しだけ平子が嬉しそうにしているのは気のせいだったのだろうか。

平「…コーヒー、どうぞ」

『ありがとうございます(^-^)』

平子のついでくれたコーヒーを飲むと、冷え切った体が温まるのを感じた。

『美味しい…温まる…』

平「…何か、あったんですか？」

きっと先ほどの事を聞いてきているのだろう。

『いえ…何でもないんです』

平「そうですか…」