梅がこぼれ、椿が落ち、牡丹は崩れ、雪柳は吹雪き、菊が舞い、命が散る。 (ページ15)

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●十三匹と十三本ページ15

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鉄骨落下事故から1週間余りが経った。

その間、何かがあったかというと、ただ今まで通りの日常を過ごしていただけで、特に何も起こらなかった。
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それでも、必然のような偶然は起こるものだ。
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昼食の時間になり、橘に「昼ご飯でも食べてきなさい」と追い出された百鬼は、とりあえず近くの喫茶店でコーヒーを飲むことにした。

店に入ると、いつか見た、男の姿があった。

『…！』

相手もこちらに気づいたようで、少し驚いたような表情をする。

狐のように目の細い連れらしき男もこちらに気づく。

平「…百鬼さん…」

『平子さん、お久しぶりです(^-^)』

倉「なんすかあの美女。タケさんの知り合いっすか？」

平「……まあ、な」

倉「へー！あ、良かったらここどうぞー」

平「おい、倉元…」

『別にいいですよ(^-^)』

平子の隣の席に腰を下ろし、コーヒーを注文する。

平「すみません」

『いえいえ、気にしないでください』

そこまで話すと二人とも黙ってしまい、暫し沈黙が流れる。

その空気に耐えかねたのか、倉元が咳払いをして話し始める。

倉「ｺﾞﾎﾝ……あのー、お名前教えてもらってもいいっすか？」

『百鬼夜蝶です』

倉「ここにはよく来るんすか？」

『いえ…初めてです…ここの近くに仕事場があったので…』

倉「お仕事は何を？」

『一応美容師を…(^^;)』

倉「マジか！今度行ってみようかなー。美容室の名前は？」

『vouv(ﾉｲﾝ)です。ギリシャ語で、"心"って意味なんです』

倉「かっこいいなー、あの良かったらメアド交換してくれませんか？」

『…えっ…』

倉「それか電話番号。駄目っすか？」

『え…っと…その…』

にっこりとした顔で迫られたじろいでいると、

平「倉元。やめろ」

倉「…！」

『すみません、メアドとかはちょっと(^^;)』

倉「あはは、気にしないでください」

頼んだコーヒーを飲みほし、席を立つ。

『自分のコーヒー代は払います』

平「いえ、俺が払っておきますから」

『え、でも…』

平「これくらい払わせてください」

『………ありがとうございます(^-^)』
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店を出て、仕事に戻ろうと歩き始めてふと思った。

((………私ったら、知らぬ間にあの人の事信用してた。警戒心なんてこれっぽっちも無かった…。たいして話しているわけでもないのに…あの人の雰囲気に…飲まれてる…？))

その事実に気づき、少し危機感を感じたのだった。