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第八十四斬 名前。 ページ34

浦原喜助。
百十年前、十二番隊隊長として護廷十三隊に所属していた男。
“あの事件”の後のことは誰も知らずに過ごしていたが、よもや。
「……まさか、キミは……」
がれきの中から感じる若い死神の眼光。この少女に、この霊圧に覚えがあった。
「キミは」
あの子なのかい、と。そう続けようとした京楽は異変に気付く。
一向に、立ち上がる様子がないのだ。鋭い破片でも刺さったのだろうか。
自身が力の加減を間違え、気絶してしまったのか。――……否。

煙が晴れ姿を現した少女は、頭を押さえてうずくまっていた。
「こんなとき、に……限っ、て……っ!」
苦しげにつぶやく彼女に、かつて可愛がっていた幼い子の姿が重なる。
無意識に歩みを進める。少女がふらふらと立ち上がるのを視界に納める。
「まだ、負けるわけには、いかない…………っ」

「紅雲ッ!!『増撃』ッッ!!!!」
聞こえてくる声に、花天狂骨を構えた。


「失礼、します」
弾こうとしていた己が手は止まったまま。見ると、
下がらせていたはずの伊勢が少女を抱えていた。
「……七緒ちゃん……」
「隊長、ちんたら戦いすぎです。今の攻撃……どんな技がくるにしろ、
まともに受けていたら大怪我は必須でしたよ」
茶渡を回収しつつ、気を失っている死神の表情を見る。
その表情に、やはり既視感を覚えた。
「伝令の続きをお伝えしますが……」
報告を聞きながらため息をつき、ほこりをぱっぱと払う。
無機質な声が止まったのを見計らって、重い口を京楽は開いた。

「七緒ちゃんはさ、百数年前……浦原喜助くんが現役の隊長だった頃を
覚えているかい?」
「は……?何を急に……」
質問の意図が読めずに困惑する伊勢をよそに、ゆっくりと歩き出す。
「幼い子ども……あの時の君とおんなじくらいの女の子がいたよねぇ。
あの子の名前、憶えてる?」
「ああ、いましたね。いつの間にか現れて、例の事件が落ち着いたあたりから
姿を見なくなりましたけど……まさか」
何かを察した伊勢に、京楽はうなずく。

「あの子の名前も、A……だったね」

聞きたいことが山積みだねぇ。
やれやれと吐かれた二度目のため息。
その重さは、伊勢にも計り知れなかった。

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yui - 頑張ってください! (2019年11月15日 22時) (レス) id: a956401359 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き楽しみにしています! (2019年5月11日 23時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
雲風(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメントありがとうございます。完結ではありません。自分の中でのストーリー構成に狂いが生じてしまったので現在更新停止のような扱いにさせていただいております……設定が完結になってしまっているので直しておきますね。ご指摘ありがとうございました。 (2019年5月11日 22時) (レス) id: 73159258cc (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 終わりになってますがこれで完結なのでしょうか? (2019年5月6日 13時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
雲風(プロフ) - http://uranai.nosv.org/u.php/novel/rahdbci4/ ←こちらの短編集にて、夢主ちゃんと店長の短編を一つ投稿致しました。店長のお誕生日についての前日譚です。ご興味がありましたら是非。 (2017年12月25日 19時) (レス) id: 73159258cc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雲風 | 作者ホームページ:https://twitter.com/?lang=ja  
作成日時:2015年3月28日 19時

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