手のひらの上でサンバを踊るな【あんスタ】

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「ねぇこれ、全然想像してたのと違う。使えない」




頭上から降る冷たい言葉に、Aは顔を上げることが出来なかった。



「ちょっと！その言い方はないでしょう！」
「だってあんず！こいつ星見って聞いてたからもっと革新的なやつ持ってくるのかと思ったのに違うじゃん！」



珍しく大声のあんずと夢ノ咲のアイドルの声はまるでテレビの向こう側のことのようだった。
Aはただ、嫌な予感が的中しちゃったなぁとぼんやりと思う。


考えてみれば当然のことだ。

日本ではあまり知られていないが、海外では高く評価されているという“星見”。
その名はAの入社を機に瞬く間にESに広まり、その物珍しさから過度な期待を寄せられていた。

そして、その期待はAが想像していたものよりずっと大きなものだった。それだけの話である。


ああ、失敗しちゃった。英智さんに失望されないといいのだけれど。


そう思いながらもあんずの腕を引っ張る。



『あの、私が悪かったです。ごめんなさい』
「ちょっ、星見ちゃんは悪くないよ！」
『ううん、“星見”は、父はもっとすごいんです。私がそれを上手く再現出来なかっただけで』



だからごめんなさい、と。もう一度アイドルに頭を下げれば、彼はばつが悪そうに「まぁ、いいけどよ」と呟くように言った。


彼のその言葉と、庇護対象を傷つけられたあんずの無言の圧力によりその企画はそのまま通ったが、Aは納得いかなかった。

だって、アイドルは納得していなかった。それじゃ父みたいなプロデューサーじゃない。こんなの“星見”じゃない。
だから一層自分は研鑽を積まなければ。


そう思っているのに、そのネームバリューの凄まじさ故かそんな時間もないほどAの元には仕事が舞い込んでくる。

そして、



「星見って、なんか思ってたの違うね」

「なんか古くさいんだよねー。一昔前ってかんじ？」

「もっとあんずさんみたいな真新しい感じの企画持ってくると思って期待してたのにな」



それらの仕事でほぼ全てそんな言葉をかけられ、

「まぁいいけど」

の一言で通された。



Aの企画はスタプロ内で目立った評価をされることはない。
それなのに、皆は繰り返し星見のプロデュースを望み、繰り返し同じ言葉を吐く。



ここまで来れば嫌でも気づく。

皆が望むのは自分のプロデュースじゃない。皆は“星見”がプロデュースした企画がほしいだけなのだ、と。

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