8話 ページ10
ユウは僕の右手をじっと見てきた。
ずいぶんと今日はキレてるな…と思っていたら、突然ユウに両手で右手を握られた。
僕は驚いて、体が反射的にビクッとなった。
ランマ「ユウッ…?!どうしたの?」
神田「………」
問いてもユウは返事をしない。ただじっと、僕のことを真顔で見ていた。
ユウはこういう時、自分の口からじゃ恥ずかしいようなことを言いたいんだ。僕は自分の頭で考えた。
まず、神田って呼んだ理由。
いつも二人の時なら、ユウって名前呼びだけど、人前では神田と呼んでいた。ユウは心を開いた人にしか名前呼びをさせてくれない。
だから気を使って「神田」って呼んだ。
ランマ「…神田って呼んだのは、人前だったから、だよ?」
神田「…そうか」
ユウは僕の右手を離した。
納得してくれたかな?っと思い、ふぅーとため息をついた。
ユウはそのままベッドに腰を掛けた。いつも思うが、ユウのベッドは居心地が悪そうだ。
部屋の時計を見ると、もう夜の一時を過ぎようとしていたところだった。
ユウは任務から帰ったばかりだというのに、アクマが教団に現れたのを、倒そうとしてくれた。
実際にアクマが現れていたら、皆ユウに感謝するはずだ。僕は今回の件はお説教なしに決め、ユウが座るベッドの前に立った。
ランマ「ユウ、任務が終わったばっかりだっていうのに、皆のために門番の所へすぐに向かってくれてありがとう」
神田「ふん…」
本当、素っ気ない。もう少し照れてくれたっていいじゃないか。
僕はユウの前髪あたりを撫でた。
ランマ「今日はもう遅いし、また明日ね。おやすみ、ユウ」
神田「チッ…おやすみ」
今日も可愛げがないな。
もう少し顔に合う可愛さが残ればいいのにと、ユウにはありえないであろうことを考えながら、僕は部屋を出た。
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作者名:欄ま | 作成日時:2016年8月24日 3時