婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

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｢説明をしろ｣


｢はっ！｣




隣に立っていた、これまたゴージャスな装いの男の人が1歩前に出た


多分使用人ではないだろう。貴族様って感じの人だ




｢酒場娘のA。今この時を持ってそなたはA・アルデリーニとなりこの国の第1姫とす。

そして隣国の王子である“まふまふ”と政略結婚をすべくその人生を捧げ、この国の反映にその身をもって尽くされよ。

こちらはそなたに全ての生活を保証しまた、教育も捧ぐことをここに約束する。｣




ま、まて、まてまてまて。
気になる言葉が多すぎて、空いた口はふさがらないし頭も処理落ちから返ってこない



第1姫とか王子とか……。えっと───




｢な、なん……なぜでしょう。なぜ私でなくてはならなかったのか……｣




一瞬、刃物が金属に当たった音がしたけど、どうやら抜刀は免れたらしい



1歩でも間違えればこの真っ白なドレスが容赦なく赤く染まりそうだ






｢それは追って通達する。
今から契約の義を行う。A・アルデリーニこちらに｣





ぴょんぴょんと、子供のケンケンパの遊びのように私の名前が変わってしまうし
勝手に未来が決まってしまう



目の前に置かれたのは羊皮紙で、庶民の私は見たこともないものだ





｢ここにサインを｣




｢………｣





無理だ。そんなのできっこない。



だって私は文字なんか書けないのだから





ペンを握らされたまんま動けずにいた
書けないとか言ったらどうなるんだろうか



そのまま家族共々不敬罪で殺されるのだろうか





｢どうされた｣



｢け、血判ではなりませんか？｣




｢なるほど、文字が書けないのだな。よろしい、手を出しなさい｣




どうやら文字は書けなくても大丈夫らしい


ダメの基準点が全く分からない



王様にこれ以上近づくのはなしなのに、文字を書けないのはオッケーなの？






とりあえずその辺はまた今度だ。

今はこの儀式を終わらせなくてはならない





男の手に自分のものを重ねると、ペーパーナイフで親指をほんの少し傷つけられた
その血を指になじませて紙に押しつける




お偉いさんも大きく頷いてから、今度は王様にその紙を持っていってサインを促した





｢……。契約は完了した。これで貴方様はこの国の第1王女となられた｣







何に対しての歓声か分からないけれど、拍手がまい起こった


私は終始目を白黒させているだけだ





｢下がりなさい｣



｢はい。｣




自分のことなのに、全ての選択権を奪われた心地がした

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