婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

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｢……A様前へ｣






女中さんが頭を下げたまま小声で指示を出した

周りにあるあまりにも綺麗な装飾品たちに目を奪われてしまっていたが、その言葉で前を向くとようやく座っている人を視界で捕らえた



遠目でもわかる、一際盛り立てられた人
あれが王様なんだろう



言われた通り前に進んだ

そして、いくばくの距離になった時に女中さんが後ろからお止まり下さい。と教えてくれた



私もそこでピタリと足を止める




そして……




───上で座っているこの国の王様を見上げた






｢噂以上の綺麗な黒髪ではないか
もっと近くに来い｣



｢………はい。｣





意外にも若そうな見た目だし、優しそうな顔立ちだ
ジャラジャラと高級そうな装飾がいたるところにちりばめられていて、そういうのところはいかにもって感じである


お父さんよりも深い青色をした髪
綺麗に整えられた髭も、顔の良さを上乗せている




私は長いスカートの裾を踏まないように慎重に階段をあがって、王様の3段下で止まった


何となく王様の隣に立ってる剣士さんが険しい顔をした気がしたから、なんかこれ以上近づいたらまずい気がしたのだ






｢ほぉ……これならいいだろ。｣





何がいいのかさっぱり分からない
確かにこの黒髪は珍しいものだけど、本当にそれだけだ


顔も普通だろうし、今まで男さえ出来ないほど自分には女としての魅力はないと三者視点で評価できている。

確かに今は着飾っているので多少はよく見えるのだろうけど、元の私の素材は変わっていないのだから、評価も大して変わらないはずだ

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