うちのマネは女装男子でした５【男主】

173話 ページ29

縁下side





『………なんだ。聞いてたのかよ、あれ』






話がある、と意を決して切り出せばAは自嘲気味に笑った。


黙って頷くと彼は大きく息を吐き、参ったように顔を手で覆った。






『………………そっか………聞いてたの、か………』






乾いた笑いは虚ろで、思わず耳を塞ぎたくなる。


……お前のそんな笑い方、聞きたくなかった。






『…………そんで？お前は俺の隠し事を知ってどう思ったの？』


縁下「…ど…どう……？」


『驚いた？何となく気配は察知していた？一発殴りたい？…それとも……“また”裏切られた？』


縁下「っ！」





Aの言ったことはほぼ、当てはまる




とにかく信じられないくらいに、ものすごく驚いた


こいつが何かを俺に隠していることは勘づいていたけれどまさか病気を持っていたとは思わなかった


そしてこんなにも大きなことを誰にも言わずに隠していたことに対して一発殴らせてほしいし、


………わざわざ女装をしてマネージャーをしていたのを知ったときと同じような感情も、ある




……それよりも、俺は…………








縁下「………お前が…ずっと、俺なんかが想像もつかないくらいに苦しんでて…


……とにかくものすっごく辛く…


心も身体もボロボロになってるってことを知らなかったことが……気付けなかったことが……今更、苦しいし…………








.







…………お前が、どうしようもなく辛い時に、



近くにいれなかったことが、



今は、苦しい」









本当に、俺は……






【お前の友達だ】って言っていいのかと






不安で押し潰されそうなんだ








『…………なんで縁下が泣きそうになってんだよ』


縁下「………うるさい」


『………屋上、行くか』


縁下「……部活は？」


『お前その顔で部活行くの？俺が練習してるとこを普通に見れんの？』


縁下「……………無理」


『だべ』






背を向けて歩き出したAの数メートル後ろを重い足取りで歩き出した。



…とても、隣を歩けなかった。

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