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174話 ページ30

縁下side





『……どう?落ち着いた?』






屋上に着いてから10分、何も言葉を交わさずに2人は立っていた。


体育館側の手すりに腕をつき、黄昏れていたAが微笑みながら縁下を振り返る。


屋上の入り口付近に背を凭れさせてぼんやりとAの後ろ姿を眺めていた縁下は僅かに頷いた。






『…俺さ、肌身離さず持ち歩いてるものがあるんだよね』





左ポケットから取り出されたのは手のひらにちんまりと収まるプラスチックのもの


見慣れないものに縁下は首を傾げた。






『これ、吸入器っつーの。

喘息の発作が出た時に使うやつね』






吸入器、と聞くと縁下はハッと息を飲んだ。


その医療品が果たす役割くらいは知っていた。






『でもこれ使うと副作用が出るんだ、俺。

……合宿の時覚えてる?及川が倒れて、俺がそれ助けて………その後2時間くらい電話、っつって外出てたとき』






縁下は静かに頷き、あの時のことを思い出していた。


いつもはよく食べるAが珍しくいろんな人に自分の夕食を食べさせていたその手が…






『あの時の震えはこの副作用なんだ。手足の震えが止まんなくなるんだよね』






……小刻みに震えていたときのことを。


翌日の練習に入ることが出来なかったときのことを。






『実は及川が倒れるより先に俺は発作が出たから体育館裏にいた。んで俺が落ち着いた頃にフラフラ来たのが及川。


でも及川を救護室にぶち込んだ後にまた軽い発作がきてうずくまってたら…煙草吸いに来たコーチにバレた』



縁下「!…烏養コーチも知らなかったのか…!」



『そう。その時に初めて家族以外の人にバラした。そしたら顧問にはせめて伝えろって言われたから…今知ってんのはコーチと武ちゃんだけ』






…だったんだけどな、とAは哀愁を帯びた目で笑って見せた。


それ程に隠したかったことなのだと思い知らされ、縁下は思わず俯き、「……ごめん」と一言呟いた。


Aは静かに首を振り、屋上のドアに手をかけた。





『………さ、行くか』


縁下「…どこに?」


『決まってるだろ、部活だよ』





ガチャリと重々しい音を立てて開いたドア


Aは半分だけ顔をこちらに向けて続けた。







『……………けじめ、つけに行く』








試合中のような意思の強い瞳の奥に切なげな光を見つけた。


その言葉に何も答えられぬまま、Aの背中を追いかけた。

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ニノ - マジ神ですね!一瞬ではまりました!リクエスト良いですか!? (2021年3月3日 23時) (レス) id: 2da73a2d31 (このIDを非表示/違反報告)
焔蘭 - 初めまして!!!!めっちゃ面白いですね!私にもそんな文才を分けて欲しいです笑頑張ってください! (2019年3月6日 11時) (レス) id: 11e9f49b77 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶クリーム - 皆様すみません!!ご迷惑お掛けしてます!!私の方も新しくURLを所得してまいりますので…!!!!本当にすみません┏○┓ (2018年1月13日 9時) (レス) id: 9fe09aed16 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ、いえいえ。そうなんですね。バグですか……。明日には直ってるといいですね。一刻も早く直ってほしい限りですね……! (2017年9月18日 20時) (レス) id: cc7912d21e (このIDを非表示/違反報告)
ぱや(プロフ) - 美桜さん» 只今作者も確認しましたが作品内のURLだけでなく、HPの方からも見れなくなっています(;_;) 何らかのバグかも知れません、ご指摘ありがとうございます。解決方法探してみます! (2017年9月18日 20時) (レス) id: ab4af77f12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱや | 作成日時:2017年8月20日 20時

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