第280話 あなたのこと、もっと知りたい ページ39
あまりの寒さに限界を感じていた少女の体に、ふわりと暖かいものが被せられた。それは紅炎がいつも着物の上に羽織っている外套だった。
マリアは驚いて上体を起こし隣で寝ている男を見る。
「紅炎さん、これ…」
紅炎は背を向けたまま答えた。
「お前が風邪を引きでもしてアステラス王国の連中に文句を言われても面倒だからな」
「でも、これじゃあなたが寒いんじゃ」
「俺はお前のような小娘よりは数段体が丈夫だ。見くびられもらっては困る。早く寝ろ」
そうぶっきらぼうに言い放つ男の背中に、マリアは小さく微笑んで頭を下げた。
「…あ、ありがとうございます…!」
紅炎の外套を被り再び横になる。男の体温と匂いに包まれ、心臓が高鳴った。
(なんか、紅炎さんってただただ今まで怖い人ってイメージしかなかったけど、ちゃんと温かいし、一人の人間なんだなって思える…。これからもっと紅炎さんのこと知っていけたらいいな)
寒さが和らぎ安堵した少女がゆっくりと目を瞑り、眠りに就こうとしたその時。
『我らが王、そして小さな歌姫よ、目覚めなさい…』
突如頭上に上品で威厳のある女性の声が響いた。
マリアが目を開けると、巨大な体躯を持ち青色の肌をした者3人が彼女たちを見下ろしていた。
少女は彼らを見上げ、恐怖で「ひょええ!」と叫び声を上げると、隣で爆睡している男の体を一生懸命揺さぶる。
「こ、紅炎さん、起きてください!おばけが!おばけが出ましたあああ〜〜!!」
紅炎は目を擦りながら不機嫌そうに体を起こす。
「俺の眠りを妨げるとは何事だ。腹が立つ。やはり先程の休戦協定は無しだ」
そうぼやいていた紅炎であったが、目の前の者たちの存在に気づくと、目を見開いた。
「アガレス、アシュタロス、フェニクスではないか。久しぶりだな」
マリアは紅炎と青い巨人たちを交互に見ながら尋ねた。
「え!?お知り合いなんですか?!」
「俺のジンたちだ」
ワニの鱗のような肌を持った狼―――アガレスが口を開く。
「お久しぶりでございます。我が王よ。本日は貴方の弟君、練紅明様とアステラス王国の研究者トラルークの要請により、迎えに来ました」
「…そうか、あの二人が…しかし、ジンに着目するとは大したものだな」
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ちぇりい(プロフ) - ネコ2世さん» ありがとうございます!!!マギも完結しましたし、まだこの小説を読んでくださっている方がいることに驚き、とても嬉しいです! 頑張って完結させますね!! (2022年1月27日 23時) (レス) id: 3c2f248552 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - みっちゃんさん» まだですが、頑張ります!! (2022年1月27日 23時) (レス) id: 3c2f248552 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世(プロフ) - この作品を読んでいてファンになりました!美少女達の恋の行方や世界を救えるのかなど続きが気になります! (2022年1月24日 5時) (レス) @page40 id: 70e333ef08 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - これって物語完結したんでしょうか? (2021年4月28日 23時) (レス) id: 9e3370e2e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - (*∀*)ノさん» コメントすごく嬉しいです!!ありがとうございます!! 大好きになっていただけてかなり嬉しいです! 今後もマリアの活躍を楽しみにしていてください。 (2019年4月15日 0時) (レス) id: 3c2f248552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぇりい | 作成日時:2018年3月30日 16時