【鉄血のオルフェンズ】誰が為の (ページ2)

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シノと出会ったのは、CGSがまだ存在していた頃。
シノのピアスがまだ、両耳につけられていた時代。

「大丈夫かよ」

暗いクリュセの路地裏で、大人の暴力に屈するしかなかった私を。
助けてくれたのは他でもない、シノだった。

「……痛い」

シノが私を、鉄華団に置いてくれた。
シノが私の、人生の指針だった、はずだった。

「女の子なんか連れ込んで。……よく怒られなかったね、シノ」

シノの隣にはいつも、あの子が居た。
金髪の、モビルワーカーの整備をしている、可愛い顔をした男の子。

「何だよヤマギ、羨ましいのか？」

ヤマギと呼ばれたその子は、私のことを嫌っていた。
今ならわかる。
ヤマギはシノが、好きだったのだから。

「別に。…………君も、よく着いてきたよね。こんな物騒な場所」

ヤマギの言うことはいつも正しかった。
ヤマギは迷いなんて無くて、反対に私は迷ってばかり。
シノが居なければ何も出来ない。
きっとヤマギは、自分の意思が無かった私を許せなかったのだ。
鉄華団が出来た、あの日まで。

　初めは、ヤマギのことを《ギルマトンさん》と呼んでいた。
歳は私と、そう変わらないはずだけれど。
でも私は、正しいことしか言わないヤマギが、怖かった。

「ギルマトンって長くない？……いいよ、ヤマギで」

ブルワーズとの戦いの後で、そう言われた。
私とシノの距離感に、気づいてしまったらしかった。
私はシノが好きだけど、シノは私のことなんて何だとも思ってなかった。
あの時私が、ヤマギのことを好きだと気づいていたら。

「……ヤマギ」

私が傷つくことも、ヤマギが傷つくことも、シノが傷つくことも。
きっと無かったんじゃないかな。