戦場の晩餐を、君と共に…其ノ壱 ページ8
『……ん』
新幹線が走る音は静かだが、周囲の話し声が耳に障る。
寝ていた上条はふっと瞼を開き、外の景色へと目を向けた。そこには流れるのは、横浜とは違うビルばかり。見慣れた海はもう既に見えず、内陸の方に入ったようだ。
『太宰、明日関西行く』
「……ええっ!?何で!」
事件から帰ってきた太宰達に遅れ、探偵社に戻ってきた上条は直ぐに社長室へ向かった。そして、数分後、唐突にそう告げた。彼の天然発言には慣れている太宰でさえ、一拍少し遅れて驚いている。
『急用』
「いやいやいや、ちょっと待ってよ!いくら何でも、切符とかホテルとかはまだだろう?」
『手配済み』
上条は生真面目という訳ではないが、予定の管理は普通にしっかりしているため、用事があれば前もって太宰に伝える。
しかし前日に、それも突然伝えられることは初めてだった。
『…国木田も、そういう訳だから。数日此奴をよろしく』
「はっ!?いや、ちょ、おい!!」
そのまま、上条は帰宅した。毎日共に帰っている太宰を放置して。
「何なんだ彼奴は…」
「上条さん、ちょっと変じゃないですか?」
「そんなことよりも、これでは明日の予定が狂ってしまうじゃないか!」
様子を隅から伺っていた敦は、国木田に尋ねるも自身の予定変更で忙しい模様。
「……太宰さん、どうかしました?」
それに苦笑を漏らすが、上条が出て行った扉の方をじっと見つめたままの太宰の名を呼ぶ。
「ねえ、敦くん。斎って今日煙草吸ってた?」
「そう、ですね…初めて見ましたけど」
「そっか」
太宰が知る限り、上条はほんの数年前に喫煙は止めたはずだ。だが稀に、彼からその匂いが漂う時がある。味わっているのはそんなものでは無かったはずなのに、煙はとても不快な匂いがした。
(そろそろ限界、ってとこかな…)
妙に覇気も無く、何処か怠そうな彼の容態に気づけなかったことに、太宰は少々後悔していた。
それが、約十八時間前の出来事。
女性が預かったという手紙には、ご丁寧に切符も入っていた。同封されていた便箋には、“招待”の言葉だけでなく、ホテルの手配をしてあるという旨も書かれている周到さだ。
(…やっぱりあの人は嫌いだ)
車内放送が入り、もう少しで駅に着くことを知らせるのを聞きながら、簡単な手荷物を整理し始めた。
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます! (2018年3月21日 20時) (レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい!応援しています! (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2017年3月20日 20時