■高等遊民 ページ35
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「どこ行こうか…」
トド松くんと並んで歩きながら話していると、トド松くんは「んー」と可愛顔で悩んでいたと思えば手をクイっと回して「行っとく?」と言った。
それを見て、おそ松さんがぱぁっと嬉しそうな顔をして「行こう!」と叫ぶ。
「どこに?」
「Aさんをそっちの道に引き込むなお前ら!!」
「大丈夫、すっっっごい楽しいから」
「Aちゃんお財布持ってるよね?」
「あわよくば儲けもでるよ」
「一松までやめろ!!」
チョロ松さんの声は届くことなく、私は両側からトド松くんとおそ松さんにひっぱられ、後ろから一松くんに押されて走り出す。
「…ここは…」
「パチンコ♡」
「…初めてです私」
「お手をどうぞ、子猫ちゃん」
「あはは、どうも」
謎のテンションのカラ松さんが自分の家のようにパチンコ屋さんに私を招き入れる。
賭け事やゲームに興味なくて、趣味といえば料理と散歩ぐらいだったわたしにはまさに未知の世界。
「うぇーい」と嬉しそうに駆けていく彼らを見ながら適当に機械の前に座った。
「チョロ松さん…」
「え、あ、はい」
「無駄遣いするなよー」と兄弟たちを窘めていたチョロ松さんのパーカーをちょいちょいと引っ張る。
「どうやってやるのかわかります?」
「え、あー僕、あんまりパチンコは…」
「そうですか…おそまっ」
「待って!ちょっやっぱり僕が教えます!僕が!!」
チョロ松さんは、おそ松さんを呼ぼうとしたわたしの口をふさぐと必死で自分を指差す。
私がぺこりと頭をさげると、口に当てていた手をすごい勢いで離して「玉に変えてきます!!」とカウンターの方へ突っ走っていった。
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ジャラジャラと足元の容器に銀色の玉が入っていく。
黙々とやる私の横でチョロ松さんは絶句している。
「…Aさん、ほんとにしたことないんですか?」
「新鮮で楽しいですねーコレ」と笑いながら隣のチョロ松さんを見れば、「よ、よかったです…」と困ったように眉を下げて口元に手をあててすーっと目をそらされた。
「Aさん…」
「はい?」
「あの、今…」
「はい」
「か、彼氏とか、います?」
機械に目を戻していた私はまさかの発言にぱっとチョロ松さんを見る。
「わー!すみません!!変なこと聞きました!」と弁解するチョロ松さんに「いませんよーそんな、私なんかに」と頭を掻くと、
「ほんとですか!?」と爛々とした顔で見つめ返された。
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