□事故 ページ46
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「いただきます!」
「…いただきます」
ありもので作ったから、魚に味噌汁にご飯という昭和の食卓感がすごいけど、それを前にして一松くんと2人で手を合わせた。
猫にもあっためた牛乳と鰹節をあげて、気持ちよさそうに横になっている。
無言でもぐもぐと食べている一松くんをじーっと見ていると、ちらりと目線を上げて「…何」と言われた。
「…どうかな」
「…不味くはない」
「よかったー。一松くん、私が肉じゃが作った時もハンバーグ作った時も、みんなと比べてあんまり食べてなかったから」
「魚好きなのかなーと思って」と魚の身をほぐしながら言うと、一松くんの箸が止まる。少しびっくりしたように私を見上げていたと思えば「魚の方が好き」と頷いた。
「やっぱり人と一緒に食べると1人で食べるより美味しい」
「…」
「いいよね、6人も兄弟がいるなんて!寂しいことなんてなさそう」
「まあ、普段はそうだけど…。六つ子なんて5人の味方じゃなくて5人の敵がいるってことだからな」
「え?」
忌々しい顔で呟いた一松くんに、今朝のことか…と少し経って気がついて、私は話題を変えようといそいそと立ち上がる。
「一松くんみかん好き?この前ご近所さんにいっぱいもらったんだけど」
「…嫌いじゃない」
「1人じゃ食べきれないから食べ…」
段ボールからみかんを取り出して一松くんに渡そうと歩いて行くと、こたつのコードにひっかかって「うわ!」とこける。
丁度目の前にいた一松くんはびっくりした顔で私を見て、そのまま下敷きになってしまった。
………やってしまった。
久々に不幸体質がでた…。
「ごめん!ごめん一松くん!」
「……っ、さっさとどいて」
「はいすいません!」
起き上がろうとすると、私の髪の毛が一松くんのパーカーのチャックにひっかかっていて、私が一松くんを押し倒しているような状況で止まってしまう。
私は一松くんの頭の両脇に手をついたまま、困り果てて一松くんを見下ろす。
私の影が落ちた一松くんは、ぼーっと私を見上げている。
この状況にかぁーっと顔が火照る。
「…あっ!ごめん今解く!」
何やってるんだ私はと冷静になって髪を解こうとするけど、からまってしまった髪はなかなかほどけない。
焦って「切ります!」という私に一松くんは「…貸して」と私の腰を支えて起き上がると器用にほどいてくれた。
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