狼は赤ずきんに恋をした____

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駿佑side



大きな大きな木の影から、すっ、っと黒い腕が伸びた。


道「うぇっ！？」



なんか、変な声でた！？


やばいやばい、逃げなあかん！？


えっ、どうしよ、足が動かん！！



((ﾊﾟｻｯ



道「…え？」



黒い腕はすぐに引っ込んだ。


かわりに、小さな花束を残して。


道「…」


恐る恐る拾い上げてみる。


淡いピンクと鮮やかな黄色の、可愛らしい花束だった。



道「…綺麗」



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長尾side



福「女はな、お花が好きなんやって！！」


お兄ちゃんが教えてくれた。

たぶん、お父さんがお母さんにお花を持ってきてたのを見てたんだと思う。


前にお父さんにドヤ顔で言われたことあったし。


和「ママの機嫌が悪い時はな、お花を持ってったらええよ！ママ喜ぶから！！」


機嫌悪させとんのあんたやけどな。



だから、あの子にまた会えたらあげようと思って、作ってみた。


あの子が好きな色とか、なんも知らんけど、


そう、これは野生の直感ってやつや！！


また会えるかもわからんけど


…怖がられてないかな？

…受け取ってくれるかな？


そんな思いで、泥だらけになりながら作った。



道「…綺麗」



…綺麗


…やった



喜んでくれた！！！



嬉しくて、木の影に座りながらガッツポーズをした。




道「…あなたのお名前、なあに？」



…えっ、僕に、話しかけてる！？


木の向こうから、さっきの囁きのような声じゃなくて、少し震えた、でも大きく張った声が聞こえた。



ど、どうしよう。出ていったらだめだ、怖がられる。

でも聞いてくれてるのに無視するの？


えーっと、えーっと、、


、そうだ！！


僕は大きめの葉っぱを1枚だけちぎって、

木の幹を机替わりにして、

僕の長い爪で、キズをつけた。



それをまた花束のときみたいにそっと陽のあたる場所に置いた。



((ｶｻｯ



道「…ケント…っていうの？」


返事をしそうになって、口をおさえた。

…怖がらせてはいけない。


僕の代わりに、風がどこからか花びらを乗せて、一瞬しか強く吹いた。


その一瞬、木の下の方の葉っぱが揺れて、

彼女の顔が見えた。



彼女がおさえた赤い頭巾に覆われたあの美しい顔は、

赤く火照り、はにかみながら、僕が置いた葉っぱを見つめていた。



その一瞬だけ。

恋に落ちる音がした。




道「…またくるね」



そう言って彼女は走っていった。


まだ顔が熱い僕を残して。

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