26 ページ26
.
「蒋道」
「はっ」
「新しく斥候をやれ。少し気になる国がある」
「どこでございましょう」
「長宗我部元親といったか…国親の長男坊だ」
「…今は海賊をやっていると聞きましたよ」
「荒々しいのを使え。最近活気づいてる若造が二人ほどおったろう」
「あぁ…あの者たちですか。わかりました、すぐにここへお呼びします」
蒋道は私に頭を下げて、部屋を出ていく。
あ奴が戻ってくる間に、さっさと毛利への文を仕上げた。
「…さて、あのじゃじゃ馬は元気だろうか」
外を見れば、そろそろ桜の蕾が開き始めていた。
＊ ＊ ＊
強くなろうと誓ったあの日からよく夢に見るのは、兄上と走る草千里だった。
花飾りを頭につけて、手をつなぐ。
空が遠く、澄んでいた。
…でも、目が覚めて何もない朝だと気づけば、少し寂しくて心がキュッとした。
(おはよう、兄上)
今日もA家は元気そうです。
父上が私のわがままに頭を抱えています。
毛利さんちの元就くんと少しだけ話ができるようになりました。
…そんな簡易な報告をボーッと頭に浮かべながら、布団から起き上がる。
声をかければ侍女が入ってきて、支度の準備を手伝ってくれた。
(みんなが慣れたのかはわからないけど、侍女のみんなは普通に接してくれるな)
こないだの、宮の足袋速球渾身の一撃から、侍女たちの雰囲気が和らいだ。
それまでは少し腫れものを扱うかのようだったのに。
良いのか悪いのかはわからないけど、少し私への接し方が分かったみたいだ。
(とはいえ、そのうち皆が平気で私に足袋を投げつけてきそうで怖い)
それだけは阻止せねば。
あんな怖い侍女は宮だけで十分だ！
「…！」
「A様？…如何なさいましたか？」
「あ、ううん。なんでもない」
ふと、覚えのある気配を感じた。
(この気配…婚儀の時も)
まさかとは思うけど、A家の忍び衆ではないだろうか。
でも、どうしてここに？
私の監視は宮だけで十分なはず。
護衛隊も少し連れてきているし、わざわざ忍び衆を連れてくる理由はない。
(なんで…)
まさか私は
A家の忍び衆にまで監視されているのだろうか。
「…何考えてるの父上」
「え？」
「ううん」
思わずポツリと呟いてしまった。
侍女の問いかけに首を振って、気配のする天井へ視線を向ける。
すると、何かを察したように気配が消えた。
(これは“当たり”だなぁ)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒のコ屋(プロフ) - START＊ANTEMISさん» コメントありがとうございます！5年ほど前の作品をリメイクしておりますので拙い文章ではございますが楽しんでいただければと思います！すでに30話ほど進んでるのに進展ないー！（笑）ここから頑張って二人の距離をエイエイ縮めてやりたいと思います！ (2022年4月28日 19時) (
レス) id: dbfae2dae8 (このIDを非表示/違反報告)
START＊ANTEMIS - 黒のコ屋さんはじめましてSTART＊ANTEMISと言います😺此方の作品を読ませて頂きましたが男勝りなヒロインは元就の所に嫁いで一月まだ進展が進む様子もないそうですが一体次回はどう展開していくのか！？ (2022年4月26日 16時) (レス) @page23 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒のコ屋 | 作成日時：2022年4月1日 14時
