1 ページ1
.
父上の部屋に呼ばれたかと思えば
縁談の話をされた。
「えええ〜！縁談なんて聞いてませんよ、父上」
「今言ったからな」
「父上、可愛い娘は城から出すもんじゃありません」
「自分で言ってて虚しくないのか…A」
「ぐっ…痛いところを突くな」
あきれ顔の父上はよく見てる。
小さな頃から悪戯好きな自分だ。
困らせたことなら幾度となくあった。
「結婚なんて考えてないし…父上と家臣以外男なんて見たことないし…」
「十分見ておるではないか、馬鹿者」
バレたか。
「それに、お前はその台詞を言い続けて何年になる。もう16歳であろう。婚期に遅れすぎだ」
「一生独身でもいいです」
「お前は家を滅亡させる気か」
「死んだ兄上が悪い。私は何も悪くない」
「ちょっと黙れ…ホント頼むから」
あぁ、頭を抱えた。
相当痛い子なんだろう私は。
ふふん、そうやってまた今回も潰れてしまえばいい。
結婚なんて退屈で窮屈。面白くもないし、夫の機嫌を取るなんて嫌だ。
「お前の兄の死は仕方がないものだ。さすがの人も病には勝てんだろう」
「では、父上も私の我儘には勝てんだろう」
「馬鹿にしとるのか、お前は」
額に青筋を浮かべたところで、さすがにヤバいと感じ取った私はさっさと立ち上がった。
「話は終わったみたいなんで、帰ります！」
「A！まだ話は―――「悔しかったら」
あたふたする付きの者を押し退かし、襖を開けた。
「無理やりにでも花嫁衣装を着せてみることですね。できたらの話ですけど！」
べ〜、と思いっきり不細工な顔だ舌を出してやった。
唖然とする父上を放って、部屋に戻る。
「結婚なんてするものかっ！」
ぴしゃりと襖を閉めて。
誰もいない広い部屋を一人、見渡した。
「…父上のばーか…」
ムッとした顔で、ふと壁にかかった刀を見る。
「………………」
兄上の形見。
カチャッ
それを手に取って、少しだけ抜いてみる。
綺麗に磨かれた刀身は美しく、障子からこぼれる優しい光に反射してキラキラしていた。
「…綺麗だね」
こんなにも美しいというのに
この道具は、人を殺すために存在するという。
(私の存在理由は何だろう)
裁縫は嫌い。
茶道も華道もつまらない。
「なんで女なんかに生まれてきたんだろう」
お琴も嫌い。
舞踊も苦手。
「なんで男じゃないんだろう」
綺麗な着物も
結い上げられた髪も
「なんで生きてるんだろう」
日に焼けない、この体も。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒のコ屋(プロフ) - START＊ANTEMISさん» コメントありがとうございます！5年ほど前の作品をリメイクしておりますので拙い文章ではございますが楽しんでいただければと思います！すでに30話ほど進んでるのに進展ないー！（笑）ここから頑張って二人の距離をエイエイ縮めてやりたいと思います！ (2022年4月28日 19時) (
レス) id: dbfae2dae8 (このIDを非表示/違反報告)
START＊ANTEMIS - 黒のコ屋さんはじめましてSTART＊ANTEMISと言います😺此方の作品を読ませて頂きましたが男勝りなヒロインは元就の所に嫁いで一月まだ進展が進む様子もないそうですが一体次回はどう展開していくのか！？ (2022年4月26日 16時) (レス) @page23 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒のコ屋 | 作成日時：2022年4月1日 14時
