10話 ページ12
しばらくすんすんと泣いていたが、いつの間にかテレビが止まっていることに気づいて、私はスザクから離れてテレビ画面を見つめた。
人と人がこんなに無残に殺し合う。殺して殺して、誰かの大切な人を奪い、自分もまた奪われる。
こんな戦いに、人同士の争いに、なんの意味があるのか。
私は振り返り、ゆっくりスザクを見つめてポツリポツリと話を始めた
貴『スザク、私ね、怖いの。ホラーとかそういう類の怖いじゃなくて、大切な人を失う怖さ』
スザクもまた、わたしの目を見ながら黙って聞いていた
貴『この画面の中にスザクもいるの。誰かを殺して殺されて、誰かを恨んで恨まれて、悪いことなんて何もしてないのに、なのにッッ.....』
ス「.....」
私は自分でも頭の中がこんがらがって分かんなくて、また涙が零れてしまう。私は戦争に行ったことは無いから。こういう映像や資料でしか知ることは出来ないから。だから戦地にいる人の絶望や苦悩なんて何も分からない。その悔しさも相成って、もう涙は留まるところを知らないように、ダムが壊れたように溢れ出す。
その戦地に、スザクもいるというのに。私は分からないのだ
貴『あなたにこんな事をさせて...スザクは優しいからッッ...人を撃つ度に...心がすり減っていく。でもきっとあなたは...そんな気持ちすら押し込めてずっとずっと戦って...私...私そんなの...』
『耐えられない』と言う言葉を言う前に、私の唇はスザクによって塞がれていた。
何度も何度も甘いキスをされて、スザクが私を抱き締める。今まで感じたことの無いような強さで。
痛くて甘くて、痺れるような快感に溺れそうになる。このまま時が止まればいいのにと思う私のわずかな希望は絶たれ、スザクが口を開いた
80人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴー | 作成日時:2019年3月1日 2時