運転手さんお疲れ様です ページ4
そうしたら何故か、ふっと真剣な表情をした太宰さん。目を瞬かせた私に、ぐっと体を近づけた。車内で逃げ場のない私は、それに驚いて身を引こうとしてもダメだった。真意の読めない瞳が間近に見えて、勝手に喉が鳴った。
「君──如何やって、こんな所に来たの?」
……あぁ、クソ、一番訊かれたくないことを。
「だって裸足だよね? そんな足で此処まで来られるとは思えない。それに服装。見た感じは普通の部屋着だし、幾等莫迦でもリュックサック位準備してくるよ。なら車で此処まで来たのか? それも違う。あそこは峠の下だ。道路から落ちるか、最初から行くしかない。道路から落ちたにしては外傷が少ない。
だったら最初から行く方しか残ってないけど、態々そこに行く必要なんかないよね?」
太宰さんはそう云って此方を見た。顔は笑っている。だが目は笑っていない。こんな表現をよく小説なんかで見るけれど、実際に見ると、──こんなにも恐怖を感じるものだとは思わなかった。
それを見て直感した。
──この人に、嘘は通じない。
今回は伝家の宝刀「まあいっか」ではない。無理だ。選択肢がない。正直に話す以外の方法もあるのかもしれないが、私のようにミジンコレベルな頭脳では到底思いつかない。
……これは、正直に云うしかなさそうだ。
息を吐けば、それを私が説明してくれる合図と受け取ったような太宰さんが、元の位置に戻った。正直ものすごく心臓が跳ねていたのでありがたい。
というか説明するといっても、私だって何があったのかなんてこれっぽっちも理解してないのだ。だからありのままに話す他ない訳で。多少まごつきながら『えーっと』と口を開いた。
『信じられないかもしれませんが──いつの間にかいただけなんです』
てっきり信じられないといった顔をするかと思ったが、太宰さんは「ふぅん」と目を細めただけだった。
自室にいて──それで誰かにポンと肩を叩かれた。そうして振り向いたらあそこにいたという訳で、そこからは読者様もご存じの通り怒涛の勢いで此処に至る。彼はその話を聞き終わって、思案するように視線を空中に彷徨わせた。
しかしすぐに楽しそうな笑顔になった彼は、「ね、じゃあ君は今衣食住の内全てを手に入れてない訳だ」と云う。慥かにその通りだが、それでもその云い方には顔を引き攣らせた私。
そうしたらまた突如として、先程と同じように顔を思い切り近づけて来た。
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白夜の世界 - ユーヒ様、申し訳御座いません。ですが、優姫ちゃんは死んだおりません。作品の中では余り細かい描写をしていないのですが、今昏睡状態になっております。…あと、本当にどうでもいいかもしれませんが、ユウキちゃんです…。御気分を悪くさせてしまい申し訳御座いません (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - ゆきな様、ありがとう御座います!其方もお体に気をつけて下さい! (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
ユーヒ - 夢主の親友が私と同じ名前で、死んだって聞いて何かショック。('' ) (2019年4月3日 1時) (レス) id: 1dd8890cea (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - ヤバい太宰さん変t))ん"ん"…織田作かっこいい!(中也さん推し)これからも無理せずに頑張ってください (2019年4月3日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - 船長様、ありがとう御座います!此れから続編へ行きますので、どうぞ次の話も、宜しくお願いします! (2019年4月2日 15時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2019年2月24日 21時