第六十夜 CHCl3 ページ16
すぐにでも東京に戻ろうとするボクたちにさらに不幸は襲いかかる。
なんらかの事故で電車到着時間が遅れるそうだ。これにはボクも黒川さんもがっくりと肩を落とし、予定時刻の３時間後まで大阪の街を観光する事にした。
「…白夜様、わたくしたちは…大丈夫でしょうか」
「心配なのはわかる。現にボクだってそうだ。でも落ち込んで下を向くより前向きに考えて上を向いたほうがいいだろ？」
なんて強がりを言ってみるが、ボクだって不安に押し潰されそうだ。黒川さんも、鈴で隠していなければ耳はぺたりと伏せられ、しっぽも股の間に挟んで震えていそうな感じ。
理屈と本能だけで生きていたボクたち妖族からすれば不安に思う要素満点というわけだ。
「それにしても…大阪は神奈川とも東京とも雰囲気がまるで違うな」
「そうですわね…」
しっかりとボクの腕に捕まる黒川さん。今回ばかりは気にしないようにし、不安を拭うためずんずん進む。
…だが、この行動が間違っていたことに、今のボクたちが知る由もない。
「…白夜様…！」
人通りも少なくなった街の裏手で、ボクの腕を掴んでいる黒川さんの力が強まる。
目の前には使われていない古倉庫。
理屈ではない。本能が、ここから立ち去れと、ここにいてはいけないと警報を鳴らしていた。
くるりと踵を返し立ち去ろうとしたその一瞬…
「ッ！白夜さ……ッ！！」
只事ではない緊張を含んだ黒川さんの声。だがそれは最後まで続くことなく途切れる。
何事かと振り向いたその時、後頭部に鈍い痛みが走った。それと同時にカッと熱を持つ。
(な……、にが……ッ)
そんな声も言葉にならない。
受身も取れないまま、アスファルトの上に倒れこむ。
視界に映ったのは持ち手が錆び付いた鉄パイプ。
…そうか、あれで殴られたのか。
幸いにも血は付いていない。
走る痛みで判断力が鈍り、回らない頭を懸命に働かせ、状況を判断する。
そして声を出そうとした瞬間、何か液体を染み込ませた布を口と鼻に当てられた。
───嗅ぎ慣れないような甘い香り。
狭まる視界。意識が遠のく。
ふとボクは、偶然にも無造作に転がされた茶色い瓶を目に止めた。
(……CHCl3……？)
ラベルに書かれた文字。
何かの化学式のはずだ。だがもう頭は回らない。
そこで、鼻に付く甘い香りに刈り取られ、ボクの意識は暗闇に落ちた。
御神籤の王子様 ver.氷帝
大凶らしいで？攻めるん遅いわ
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ノア(プロフ) - けとるさん» 協力ありがとう( ^ω^ )３番だねー！ (2015年12月13日 14時) (
レス) id: 836babe48a (このIDを非表示/違反報告)
けとる(プロフ) - わし3がええ！ (2015年12月13日 10時) (レス) id: bfe4a96d52 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - リオンさん» うわぁぁぁ感想もありがとうございます！１番ですね！これからもご愛読よろしくです( ^ω^ ) (2015年12月13日 8時) (レス) id: 836babe48a (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - 楽しく読ませてもらっています。1番がいいです。英検、更新 頑張ってください。 (2015年12月13日 0時) (レス) id: cfd12bcb7b (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - こにーさん» ご協力ありがとうございます(=´∀｀)人(´∀｀=)３番ですね！ (2015年12月12日 17時) (レス) id: 836babe48a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2015年12月5日 14時
