【マギ】神出鬼没なマギif.〜もしもの世界で〜

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孤児院の近くにある公園のベンチに一人座り込む。

砂場のそばに建築された時計は夜の9時だ。


「はぁ…」


両手には、ユナンに渡せなかったバレンタインのソレ。

中身はチョコじゃなくてクッキーだけど。
毎年毎年、ユナンに渡して。
ありがとうって微笑んでくれるのが嬉しくて。

だからね、毎年クッキーの型を変えて楽しんでもらえるようにしてたんだよ。
一昨年は星型で去年はお花の型。

そして今年はオバケの型で作ってみたりして。チョコペンで顔とかも描いてみたりして。

でも、今年は渡せなかった。


「…」


渡せないのなら持っていても仕方ないのだ。
だから側にあったゴミ籠にソレを捨てようとした…、その時だった。


「家庭用のゴミを公共のゴミ箱に入れるのはダメだよA」


突然の声にビックリして。
振り返った先には、少し息を切らしたらユナンがいた。


「君がまだ帰ってないと聞いて探してたんだ」

「…」


映画からの帰りなのだろう。
彼の両手には紙袋があり、チョコが沢山入っている。

どれも可愛くラッピングされていて。ハート型の箱に入っていたり、ピンクの可愛い袋に入っていたりして。

それに比べてどうだ僕のは。
箱は赤色のシンプルな四角で。袋もワンポイントに黒猫が描かれているやつで、可愛さなんてない。


「どうだった? 映画は」


可愛いと評判の子に告白された上に映画に誘われて。

きっと好きになって、告白も承諾したんだろうな…。


「あぁ、途中で切り上げてきたよ」

「えぇ!?」

「だってあの子。自分の事しか話さなくて人の話を聞こうとしないんだ。それに凄く香水臭くて気持ち悪くなっちゃった…」

「そ、そうなんだ…」

「あと、告白も断ってきたよ」


驚きの連続で思わず後ずさってしまった。


「ねぇA。ソレ、捨ててしまうのかい?」

「うっ…。捨て…ない。あげるユナンに!!」


グイッとユナンの胸に押し付ける。
恥ずかしくて顔があげられない。


「え、いいのかい?」

「いいの!! ユナンの、ために作った…」


でも反応が見たくて、チラッと顔をあげたら…。


「よかった〜、今年も君から貰えた」


なんて言って笑ってるユナンがいて。


「君からコレが貰えるから、やっぱりこの時期は好きだな…」

「〜っ!!」

「Aのが一番美味しいよ」

「そ、そういうのは好きな子に言ったら!?」

「相変わらず鈍感だな〜」



寒空の下。
今年も渡せたバレンタイン。


帰宅道、繋いだ手はとても暖かく幸せだった。

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