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「たんぽぽちゃんが珍しく軽音部部室へ向かうのが見えて、つい追い掛けて来ちゃったんだけど、なかなか面白そうな話をしてるね。
寧ろ、此処は俺の出番だねっ」
何が出番なのかは解らないが、パチンと指を鳴らす羽風先輩のテンションにどう反応して良いのか解らず、少し焦っていると『嬢ちゃんも食べるかえ？』と朔間先輩はカツサンドの差し出して来た。
取敢えず『頂きます』と一切れカツサンドを頂いたが、久々にUNDEADの我の強さにあてられた気がする。
「流石、経験豊富な薫君じゃ。
お言葉に甘えて『お任せ』しようかのう」
「まぁね。
でも、協力するからには頑張ったご褒美が欲しいな〜。
Aちゃんからのちゅ〜とかさ？」
羽風先輩の言葉に私はカツサンドを噎せ掛けた。
あんずだけで無く、遂に私まで羽風先輩の『ご褒美対象』になってしまったのか。
「ね？
それ位ならいいでしょ、朔間さん」
いや、私の意見は？
そう言おうとしたが、羽風先輩の問いに朔間先輩は『それは我輩ではなく、嬢ちゃんが決める事じゃよ』と答えた。
朔間先輩に正論を返された羽風先輩は『それもそうだね』と視線を此方に向け、妙に甘ったるい声で私を呼んだ。
「Aちゃん、いいよね？」
(う……っ)
こういう時だけ、美形は本当にズルい。
いつもニコニコしている羽風先輩の表情は少しだけ真面目で、目が獲物を狙う魔物のようにギラリと僅かに光る。
何より顔が綺麗な羽風先輩にこんな至近距離で迫られると妙に恥ずかしい。
もし、これが羽風先輩ファンの女の子なら、二つ返事で頷いてしまうだろう。
しかし、良くも悪くも経験豊富な羽風先輩なら朔間先輩の助けになってくれるかも知れない。
次いでに私もそれに肖りたい。
「う〜……！解りましたっ！
羽風先輩の頑張り次第で考えます！」
「えっ！本当！？
なら、確実にご褒美が貰えるように本気出しちゃうよ〜！」
ルンルンと上機嫌に『じゃあ、またね。愛しのたんぽぽちゃん』と投げキッスをして部室を出て行く羽風先輩を見送りながら、私の発言を聞いていた朔間先輩はやれやれと首を振り、『どうなっても知らぬぞ、嬢ちゃん』と私に忠告した。
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作者名：ナナシ | 作成日時：2018年4月7日 12時
