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真っ白い画用紙を片っ端から埋めてくれるような、そんな日常がぽつりぽつりと増え始める。そうすれば、自然と続きを描いてくれる手を求めてしまう。それだから私は、自然と彼と話すことが出来ない、ひとりっきりの放課後に物足りなさを感じるようになってしまっていた。

二日前に彼と過ごした数時間に思いを馳せながら、私はひとり閉ざした本の上に額を乗せて溜息を吐いた。二日、丸々二日、彼の気まぐれに縋り付いている私は、文字に起こしてみるととてつもなく滑稽であるに違いなかった。おとこのひとになる寸前の掠れたテノールが、何故だか聞きたくて仕方がなかった。


ねえ、ウィンナーコーヒーってなに。
ぐっと眉の間に皺をよせて、あからさまにわからない、を主張する表情。今まで見たことが無い表情。靴に羽を生やして、空中を走って行ってしまうそうな、そんな男の子が首を傾げることは、他の小学生とそう変わらないみたいでやっぱり不思議だった。

コーヒーの中に弁当に入ってるアレが乗ってんの、なんて真面目な顔で言うので、思わずくふ、と笑みを浮かべてしまえば、彼はなにわらってんの、と不機嫌そうに目を細めた。それに怯まずにオーストリアって知ってますか、と聞けば、彼はまた眉間の皺を濃くした。


『オーストラリアじゃなくて?』
『そういう国があるんです』
『ふーん』
『首都、えっと、日本で言う東京が、ウィーンって言って』
『ウン』


ウィンナーがお弁当に入っているアレではなく、『ウィーンのもの』という意味を表している、そう伝えると、彼は腑に落ちない顔をして口を尖らせた。

ほんといろいろ知ってんだな。

知らないことを包み隠さず知らないと言い、手渡した知識を黙って受け取ってくれるような、そんな素直さが生む誉め言葉がやっぱり照れ臭くて慣れなかった。
という、二日前の記憶は、そんなことはないのになんだか随分昔のことのような気がした。


文字を指でなぞるように思い出を辿って、それをひとりきりで消化しなければならない静寂が虚しかった。

他愛のない会話が楽しい。訪れる沈黙すら心地よい。
顔を合わせていない今の時間、何をしているのか。どんな顔をしているのか。できれば楽しい思いをして、笑っていてほしい。
そんなことを考えられる人に対する感情の名前はいったい何なのか。

彼の質問には答えられるのに、こればかりはいつまで経ってもわからなかった。



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設定タグ:東京卍リベンジャーズ , 佐野万次郎   
作品ジャンル:アニメ
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まめ(プロフ) - 世河経さん» コメントありがとうございます!丁寧に読んでいただいたみたいでとても嬉しいです😭 これからもよろしくお願いいたします! (2022年4月7日 11時) (レス) id: e02a633284 (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 久し振りに感嘆の溜息を吐いたような気がします……作品の持つ雰囲気に刮目しました!是非、更新頑張られてください!! (2022年4月2日 12時) (レス) @page2 id: 1e6cb0271b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みな | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/nymn624  
作成日時:2022年4月1日 21時

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