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不公平。私が考えていることとは少しずれているような気がしたけれど、それでも、「話してみれば」、その言葉がどうしてだか無視できなかった。それだから、私はまた精一杯頭の中に散らばる言葉を搔き集め始めた。
周りにどう思われているのかを考えるのがつらくて、「空気」になることを選んだこと。
できることがそれだけしかないからやっているだけで、勉強はあまり好きではないこと。
「委員長」は半ば押し付けられた肩書であること。
ぽろぽろと零れていく話が軒並み惨めであることに気付いた時には全てが遅すぎたけれど、彼は否定するわけでもなく、かといって助言するわけでもなく、ただじっとこちらを見つめて聞き入っているようだった。それでもこんな話ばかり、と申し訳なくなり、咄嗟に読みかけの本に挟まった、リネン生地に刺繍が施された栞を取り出して口を開く。
おばあちゃんにもらったもので、ずっと大切にしているんです。唯一綺麗に彩られた思い出話は、彼には退屈な話だっただろうか。そう思ったけれど、彼は先ほど「ブラックドラゴン」の話をした時と同じような表情で「いいじゃん、大事にしな」と呟いた。
口下手で、面白い話なんて何一つできなくて。彼と並ぶとより一層、そんな私が惨めに映っている気がして。それなのに、彼は私を軽んじるようなことは言わなかった。不思議で仕方がなくて、思わず「私と話していて楽しいですか」と口に出せば、彼は「ん?」とまた怪訝そうな表情を浮かべた。
「わたし、空気、なのに」
私の「当たり前」が、「当たり前」でなくなっていく。ひび割れた殻が地面に散らばっていくたびに、本当にこれでいいのか、と呟く自分がいる。私が、私なんかが、なんて。
私は空気なのに。何年分もの「惨め」が詰め込まれた、そんな問いかけに、彼は子首を傾げながら言葉を返した。
「空気って無いと死ぬだろ」
多分、一人くらいはそれに気付くから。
別に無理して変わんなくてもよくね。
拗らせに拗らせた「ひとりぼっち」の捻くれた心に、相変わらずぶっきらぼうに告げられた言葉が染み付いて離れてくれなかった。
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まめ(プロフ) - 世河経さん» コメントありがとうございます!丁寧に読んでいただいたみたいでとても嬉しいです😭 これからもよろしくお願いいたします! (2022年4月7日 11時) (レス) id: e02a633284 (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 久し振りに感嘆の溜息を吐いたような気がします……作品の持つ雰囲気に刮目しました!是非、更新頑張られてください!! (2022年4月2日 12時) (レス) @page2 id: 1e6cb0271b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みな | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/nymn624
作成日時:2022年4月1日 21時