三百五十九話 ［その目に映るもの］ ページ13
足を貫かれた英雄は、ドクドクと血を流しながら地面に倒れた。
その姿は撃ち落とされた哀れな鳥のようであると感じたのに、同情なんてものは湧いてこない。
「『異能を、解除する』」
震える声でそう呟けば、狂うほどの痛みが薄れ、体がベシャリと地面に落ちた。
ほぼ同時に立原にかけていた異能が解け、研ぎ澄まされた感覚が鈍くなっていく。
「げほっ…！」
「、オイ！」
「私は、いいから…！！トドメをさして！！」
血を吐いたAに駆け寄ろうとする立原を叱咤すれば、彼はグッと堪える顔をしたのち、倒れる福地の元へと向かう。
「何故裏切った！！アンタほどの人が！！」
どうやら立原は福地に思うところがあるらしく、何故裏切ったのか、何故世界をこんなことにしたのかを叫んでいた。
「げほっ、ぁ…」
その間、Aは正常な感覚が戻るまで苦しんでいた。
頭も体も胸も痛い。痛くないところの方が少ない。
鼻血も出ているし、血も吐いている。
『こんなこと続けていたら早死にするな』
だが、命を削ったとしてもこの戦いには意味があった。
ここで死ぬのとあとで死ぬのなら、後者の方が良いに決まっている。
「…、」
震える足立ち上がり、壁に手をつきながら立原の元へと向かう。
満身創痍というべき状態になってしまったのは悔しいが、これで良い。
『あとは、彼を殺せば』
全てが元通りになる。
英雄殺しを達成し、この世界は救われる。
《本当に？》
それは、Aの声か、それとも亡き母の幻聴か。
Aは紫の目を開くと同時に、壁についた手が何かの傷跡をなぞった感覚を覚えた。
ふと手元を見ると、廃墟の壁には『T』の文字が刻まれている。
「…？」
こんな傷あっただろうか？
やけに真新しく見える。
「T…」
ゾクリとした感覚に襲われる。
ほぼ同時に、Aの足は地面を蹴った。
根拠があるわけではなかった。
だが、動かなくてはいけないと本能が警鐘を鳴らしていた。
「立原！！」
悲鳴に似た叫びは、静まり返る廃墟によく響く。
『異能での操作は間に合わない！！』
何故か、強烈に嫌な予感がした。
Aの手が立原の腕を掴むと同時に、全体重をかけて立原の体を引き倒す。
「！」
その時、Aの左眼が捉えたのは二つの光景。
目を見開く福地の姿と、
「あ」
目の前に迫る、青白い刀身。
ブツッ
それが、左目に映った最後の光景だった。
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あじのもと - 二年ほど前からこの作品推させて頂いてます！！ふふふ、まだ完結じゃない匂いがしますね……！！！(泣)もこすけ様ならこんな、こんなジャ◯プの打ち切り作品みたいな終わり方はしない筈……！！(これで完結していても十分素晴らしい作品です！！！！！！！) (4月2日 0時) (
レス) id: fe3da03f44 (このIDを非表示/違反報告)
syaze(プロフ) - もうめちゃくちゃ好きなお話です！！求めていた理解者がまさかの立原とは！最高オブ最高、言葉にできないほどの尊さで悶えてます！二人の関係が尊すぎる！！！！！！続きが見たい〜〜〜！！！泣 (3月26日 23時) (レス) @page25 id: 6cd36c532f (このIDを非表示/違反報告)
グミ食いてぇ、、、 - もっもしや夢主ちゃん本当に死んじゃった、、、！？夢主チャァぁぁぁぁぁぁぁぁん！！！！！ 此の作品は完結でしょうか？ (12月5日 18時) (レス) @page25 id: 964781dab2 (このIDを非表示/違反報告)
爪楊枝 - コメント失礼します、最近文ストにハマってこの作品に出会いました。完結なのでしょうか？続きと、番外編を楽しみに待っています！ (11月7日 13時) (レス) @page25 id: ee4a2d718e (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 完結されてますけど更新てされますかね？アニメの方も5期続編まで放送されてましたねブラム・ストーカーと文ちゃんとの絡みが気になります！番外編の方も更新されないかウキウキしてます。更新されるまで気長に待ってます (10月26日 19時) (レス) id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2021年9月18日 13時
