【文スト】この世界で生きるのは不可能という結論が出ました 9

三百六十話　［逆転］ ページ14

燃えるように左目が熱い。
痛みを熱と錯覚してしまうほど、感じたことのない激痛が襲った。



「A！！」



立原の声が響く。
Aの体はそのまま力なく地面に落ち、赤い血が滴る。



「ッ、」



立原は瞬時に金属を操作して雨御前を福地に突き立てようとしたが、



ガッ



一瞬だった。
一瞬で立原の体は吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
骨が、内臓が破壊される。
その衝撃で異能が解除され、雨御前も地面に落ちた。



「あ…、？」



一瞬の出来事。
それを理解するのに数秒の時間を要した。



「…う、…」



それはAも同じで、沸き上がりそうになる激痛への叫びを必死で押さえ込み、地面に爪を立ててもがく。



「見事だった。急拵えの相棒でここまで儂を追い詰めるとは」



落ちた青い刀を拾い上げ、福地は「流石儂の部下だ」と白々しい言葉を付け足す。



「…なん、で…」



左頬を血で真っ赤に染めながら、Aは震える声で呟いた。
立原も同じように「何故」と言葉にすると、福地は簡単に答えを出す。



未来の福地は過去の自分に危機を知らせ、立原達を誘導したのだ。



その場所に誘導し、立原を殺すために。



「だが、まさか勘づかれるとはな。母親の血は随分と濃いらしい」



「ッ、」



「…はぁ、いい加減骨が折れる」



福地は深い深いため息をつくと、雨御前を振るう。
その瞬間、立原の視界が真っ赤に染まった。



「ぐぁぁああああっ！？」



「視力を奪えば金属操作も困難になる」



淡々とそう答えた福地は、くるりと方向を変え、Aの元へと歩み寄った。



「ッ、」



Aはグッと歯を食いしばり、足に力を入れて立とうする。
福地は嘆息しながら腹に突き刺さった刀を抜くと、そのまま、



ザッ



「〜ッ、！！」



何の躊躇いもなくAの右太ももを貫いた。



「足を撃ったろう？
あれはなかなか痛かったぞ」



「ッ、う、ぁ…！！」



「動かん方がいい。太い血管の真横だ」



地面に縫い付けられ、動くこともできない。
それでも唯一動く腕を使おうとすれば、福地の足はAの右手を押さえた。



「…まだ抗うか、魔女の娘」



ギリッと靴底で右手を踏みつけられる。
それでもAは福地を見上げたまま、睨みつけた。



「戦いに負けても、足を縫いつけられても、利き手を封じられても…左目を失っても尚、抗うのか？」

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