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白雪姫が食べた毒林檎 ページ45

相変わらずあのカフェに行けば津島に会った。
ふらりと立ち寄れば彼がひらひらと手を振る。



「そう云えばあのループタイ、気に入りませんでした?」



「どうして?」



「つけてないものですから」



Aは熱い珈琲を飲みながら、津島の胸元を指差す。
似合うと思って渡したが、気に入らなかったのだろうか。



「あぁ、壊したくなくてね」



「…へぇ」



「あ、信用してないね。もしも高いところから落ちてしまったら割れてしまうじゃないか」



「そんな高所から落ちる予定があるんですか貴方には」



「秘密」



津島は子どものように笑うと、自分の珈琲に角砂糖を一つ落とした。



「そう云えば今年の林檎は美味しいらしいよ。
お酒にでもしたら更に美味しいだろうねぇ」



「…林檎酒ですか、甘そうですね」



「君甘いの嫌いだもんね。でもまあ…四年後くらいには美味しくなるんじゃない?」



「なんですかその微妙な数字は」



他愛もない会話だった。
特に意味もない、でも慥かに存在する二人の言葉遊び。



「六年前の龍頭抗争で林檎ジサツなるものが流行ったんだよ」



「…白雪姫の?」



「そうそう、その林檎」



龍頭抗争、慥か六年ほど前にヨコハマで起こった大規模な裏社会の抗争だ。
大勢の死者を出し、その中でポートマフィアは大きくなって行ったとか。



「まさか自分で毒林檎でも食べるジサツだとでも?」



津島はその質問には答えず、にこりと笑うだけ。



「昔、林檎ジサツと云ったら『シンデレラ』と返した友人がいたのだよ」



懐かしむように、津島は目を細めた。



「そして私は説明した、『毒林檎を食べたのは白雪姫だし、彼女はジサツじゃない』とね」



しかし結果として毒林檎を食べた白雪姫。



「君は、白雪姫は何故死んだと思う?」



毒塗れの林檎に歯を立てた白雪姫は、いったい何を思って齧ったのだろう。
津島の鳶色の瞳が、Aの紫色の瞳を見つめた。



「…私は」



もしも自分ならばどう思うだろうか。
母に毒林檎を差し出されたら、私は。



「白雪姫は…ジサツだったんじゃないですか?」



「!」



津島の目が見開かれる。
この答えを予想していなかったのか、いや、していなかっただろう。
少なくとも、Aがその答えだとは、夢にも思わなかったはずだ。

毒林檎と絶望→←何が似ているのか



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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