鬼灯の冷徹短編集＊大人味 (ページ7)

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フェアな恋を貴女と【鬼灯さま】ページ7

『鬼灯さまの鬼…っ』

「いや、鬼ですけど。私も貴女も」

『うぅ…違った…あ、悪魔っ』

「まあそうかも知れないですねえ、貴女にとっては」

努めて冷静に返せば、みるみる内に真っ赤になる
Aさんが可笑しくて、つい頬が緩んでしまいそうになる

『下さい、それ』

「今度は正攻法ですか。そんなに欲しいんですか、コレが…」

ビッ！と出された手の上に、自分の懐から出したモノをそっと乗せてやるが

Aさんが握ろうとした瞬間に
また、懐へと素早くしまう。

『ほ、お、ず、き、さまぁー！』

その反応が楽しくて、私はつい意地悪をしてしまう

「そうですねえ。Aさんも御存じかと思いますが、これは相当レアな商品なんですよ」

『知ってます…！地獄堂の【十王フィギュア】、その中でも激レアな" 宋帝王フィギュア"ですよね！… 何回買っても中々出ないっていう、幻の裁判官…！』

「ていうか、官庁でこんなの製作する許可をした覚えはないんですがね…」

懐柔のつもりか、是非これを‥と店側が寄越したサンプルを懐から出すと、目の前にかざしてマジマジと眺める

「…にしても良く出来てますよねぇ。宋帝王のサンタっぽい感じがよく出ていると言うか…閻魔大王のフィギュアも指毛まで再現されてるのに驚愕しましたが…うん…これも…」

『わ…私にもよく見せて…下さいっ』

私の腕に手を掛けて、Aさんはぐぐっ、と身を乗り出すと顔を寄せる

「本当に見境のない…」

フィギュアに気を取られ、限りなく近づいた肌からは白粉の香りと、着物に焚き付けた香の匂いが立ち上ぼり

私の二の腕には、ふたつの膨らみが強く押し付けられた

「全く…分かっているんですかね…」

Aさんの無自覚な美しさと
この無防備すぎる子供っぽさが

アンバランスを生んで私を惑わす

『ねぇ…やっぱり下さい…鬼灯さま？』

そして、上目遣いで物欲しげに見上げる貴女に
突然、私の心がひどくざわついた

「…そんなにこれが欲しいんですか」

『…はいっ！』

「なら、差し上げても良いですけど…その代わり」

私はフィギュアを懐にしまうと
Aさんに顔を寄せて意地悪く囁いた

「私から、ご自分で奪ってみて下さい…ホラ、ここにありますから」

私は挑発的に自分の胸元をトントンと指差した

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