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私と僕 ページ7

貴女「総司君・・」

掠れながらも必死で声を発する彼に沖田は目を見開いた。
何か大切な事を思い出す様に幾度も思案するが、何かが己の記憶を押し留めている。
思い出したくても、何も思い出せない。

沖田「君は・・、一体誰だったの?」

僅かに唇を震わせて、沖田は彼に問う。
だが、それは隠微過ぎて今のAに聞き取れるものではなかった。
沖田は質問を諦めて風間と対峙する。

沖田「悪いけど、この子の事は新選組も追っていてね。
僕はこの子を捕縛しなきゃならない。
あんたの行動は新選組の邪魔をしてるって事になるよね。」

殺気を漲らせた視線を風間に向け、沖田の口角は吊り上がる。
狡猾的な二人の視線をぶつかり合い、火花を散らすが、それを先に外したのは風間だ。
風間は興味なさげに刀を収め、

風間「興が逸れた。」

と、言い残して止める隙もなく、姿を消してしまう。
沖田が驚愕から茫然としていると、遠くからヒソヒソとした話し声が耳朶を打った。
ハッとすると、島原に遊びに来ていた客が沖田とAを怪しみの瞳で眺めていた。
沖田は舌打ちすると、苦しそうに咽ているAの腕を引っ張って外に出る。

貴女「総司君・・、僕の事思い出せないの?」

沖田「!?」

人通りの少ない場所に差し掛かった時、彼は沖田にそう質問する。
沖田は足を止めて彼を直視するが、Aの瞳は過去を見ている様な不思議な色を宿している。

貴女「当たり前か、僕がそう望んだんだから。」

妙に彼が幼く見えるのは沖田の錯覚だろうか。
穢れのない本当の彼の明眸が月のない暗闇に輝き、それに重なった面影に沖田は今度こそ彼を呼ぶ。

沖田「A君・・・?」


ドクンッ


二人の心臓は大きく脈を打った。
沖田は信じられないものを見る様に膠着してしまい、Aの幼い瞳は悪戯な優しい光が輝く。
互いが互い、忘れていた記憶の細い糸を切れない様に慎重に手繰り寄せているみたいだ。

沖田「僕はずっと君の事・・、忘れていたんだ。
でも試衛館に僕と同世代の子がいて、その子と剣の稽古をしていたのは覚えてる。
なのに何で今まで思い出せなかったんだろう。」

風が出てきたらしい。
今まで風も月もない静かな空間だったのが、今は夏の風が吹く心地よい空間へと変わっていた。

笑い声→←忘れている自分



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岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>なんだか、私のところで言う「エライ」に似てますね〜^^ 私のところも「エライすごい」で「とてもすごい」って意味になるんですよ〜 1mも積もる雪なんてお目にかかった事がないですよ! それだけ積もると、ちょっと怖いですね (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 姫百合さん» 姫百合さん>なかなか心の内を話さない主人公なので、ここまでくるのもなかなか大変でした(笑) 試練も二人で乗り越えてくれると信じてます!← なんにしろ、ここから最終章までが踏ん張りどころですね〜^^ (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 岬鬼さん» 「なまら」は確か[とても]という感じの意味だったと思うので「なまらスゴい」(とてもスゴい)という感じに… 私も行っててみたいものですw それくらいは積もるんじゃないですかね 私の家の庭は雪が積もっても放置しているのでいっつもスゴいことになっているんです;; (2015年3月3日 1時) (レス) id: dcc2cda9a3 (このIDを非表示/違反報告)
姫百合 - 何だかほんまにどんどん甘くなってきましたね〜^^試練があっても、二人なら乗り越えられるはずですよ♪← (2015年2月23日 12時) (レス) id: baac39ec53 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>いえいえ、テストお疲れ様です^^ 「なまら」は聞いたことありますよ!使い方は分かりませんが汗 そうなんですか!でも、一度は雪まつり行ってみたいです^^ 積雪1メートルは軽く超えるイメージがあるんですが、本当にそんなに積もるんですか? (2015年2月21日 21時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:岬鬼 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2014年4月1日 23時

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