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一陣の風 ページ42

全開に開いた千里眼でAは京助を見た。
彼よりも強烈な霊威を有する京助と彼の力の差は念動だけでも歴然としていた。

貴女「私は貴方には勝てません。
ならば、せめての時間稼ぎに付き合ってください。」

京助「・・交渉決裂だ。」

京助は重心を低くし、そして白刃を煌めかせながらその場に構えた。
Aは小さく深呼吸し、再三千鶴に『下がってって』と言い残すと京助に刃を向けて距離を縮めた。


ギンッ!!


耳を劈く金属音、掌に伝わる振動。

貴女「!?」

直後、右頬から鼻、そして左頬に一筋が走った。
痛みが一拍置いてやってくる。
紙一重で避けた凶刃は、あからさまに彼の『眼』を狙っていた。

貴女「くっ!」

負けじと突きを放ったが、京助は適格に見定めて刃を避けてしまう。
再び眼を狙う敵の攻撃にAは何歩か退いた。

京助「時間稼ぎにもならねぇよ!」

退いた事を好機と言わんばかりに京助は彼の両目に二本の指を突き立てた。

貴女「!?」

ドスッ、と鈍く低い音が響いた。
ポタポタと滴った血は宵闇に染まる地面を赤く染める。

貴女「っ・・!」

喉を唸らせ、彼は口元から滴る血を唾液と一緒に吐き捨てた。

京助「・・・チッ。」

脇差を柄で京助の手の甲を打ち、両目を狙った一撃の軌道を彼は微妙にずらしていた。
だが、その一撃を完全に殺せた訳ではない。
胸に小さな二本の穴を開ける程の衝撃に彼は吐血してしまったのだ。
そうとは言え、致命傷になる一撃を防いだのだ。
僅かに安堵したが、

貴女「っ!?」

それも束の間の事だった。
京助は刀を捨てて、その手でAの首を強く掴んだ。
思わず京助の腕を掴むが、酸素を吸う事が出来ぬ身体はすぐに機能を停止しようした。
力の入らぬ身体と朦朧とし始める脳に、彼は苦し気に目を細めた。

京助「お前のその目玉をくり抜けば、お前はただの『人』だ。」

胸に刺さっていた指を引き抜き、その指を再びAの夜陰の様な黒い瞳に映す。
必死に抵抗を試みるが、京助は彼の首を掴んだままAの身体を空中に持ち上げた。
酸素が止まった身体は己が気付かぬうちに抵抗を辞め、いつしか両手はダランと垂れ下がった。

千鶴「やめて!」

今まで彼等の攻防を見守っていた千鶴は、京助の前に飛び出した。

千鶴「え・・?」

だが、それは一陣の風によって阻まれる。
そして、その風は一直線に京助へと向かっていった。

翡翠→←決意



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岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>なんだか、私のところで言う「エライ」に似てますね〜^^ 私のところも「エライすごい」で「とてもすごい」って意味になるんですよ〜 1mも積もる雪なんてお目にかかった事がないですよ! それだけ積もると、ちょっと怖いですね (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 姫百合さん» 姫百合さん>なかなか心の内を話さない主人公なので、ここまでくるのもなかなか大変でした(笑) 試練も二人で乗り越えてくれると信じてます!← なんにしろ、ここから最終章までが踏ん張りどころですね〜^^ (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 岬鬼さん» 「なまら」は確か[とても]という感じの意味だったと思うので「なまらスゴい」(とてもスゴい)という感じに… 私も行っててみたいものですw それくらいは積もるんじゃないですかね 私の家の庭は雪が積もっても放置しているのでいっつもスゴいことになっているんです;; (2015年3月3日 1時) (レス) id: dcc2cda9a3 (このIDを非表示/違反報告)
姫百合 - 何だかほんまにどんどん甘くなってきましたね〜^^試練があっても、二人なら乗り越えられるはずですよ♪← (2015年2月23日 12時) (レス) id: baac39ec53 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>いえいえ、テストお疲れ様です^^ 「なまら」は聞いたことありますよ!使い方は分かりませんが汗 そうなんですか!でも、一度は雪まつり行ってみたいです^^ 積雪1メートルは軽く超えるイメージがあるんですが、本当にそんなに積もるんですか? (2015年2月21日 21時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:岬鬼 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2014年4月1日 23時

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