検索窓
今日:29 hit、昨日:13 hit、合計:213,025 hit

君の中にいる君 ページ26

貴女「総司君・・」

Aは朧に霞む視界で沖田の姿を見止めた。
激痛で悲鳴を上げそうになる口を震わせ、沖田の名を呼ぶと彼はAを見ずに声をかけた。

沖田「君って、たまに僕の事を『総司君』って呼ぶよね。
なんだか、懐かしいなぁ。」

沖田の口調はどこか、揶揄を含んでおり驚く程、穏やかであった。

沖田は思い出したのかも知れない。
傭兵『鬼殺し』が自身の幼馴染である事を。
それとも、Aが思い出したのかも知れない。
京助の意識を真似する以前の『神内A』の事を。

どちらにせよ、今は二人が互いに話をできる状態ではなかった。

沖田「それで、鬼さんはここに何の用なわけ?」

挑発的な声音に風間は目を細めた。
虫を視る様な、卑下するかの如く眼差し。
声もまた、それを思わせるものだった。

風間「貴様の様な人間風情に語る言葉はない。
その薄汚い思考、反吐が出る。」

沖田「言ってくれるね。」

沖田の口元から笑みが消えた。
殺伐とした空気が漂う中、沖田は一度確認する様にAを見た。

貴女「っ・・」

声こそ、上げてはいないが、彼の背は確実に重症である。
ドクドクと流血する姿に沖田はチッと舌打ちした。
長く戦えばAの命に係わる、と・・
だが、短く斬り落とされた髪の間から垣間見える瞳に沖田は再び口角を上げた。

沖田「あぁ、やっぱり懐かしいよ。
その明眸、君はA君でしょ?」

貴女「!」

ハッ、と彼は顔を上げて沖田を見た。
その声に、己の中で蠢く『誰か』も大きく反応してみせた。
緊張でドクドクと脈を打つ。
だが、それは不思議と希望に満ちた心拍。

沖田「君の中にいる君が言ってくれたんだ。
『僕を探して』って。
君の中の君が僕を信じてくれた様に、君も僕を信じて。」

グッ、と前かがみになった沖田は一気に敵との距離を詰めた。
開始と同時に沖田は突きで応戦する。

風間「!?」

風間は慌てて後方へ退くと身の毛もよだつような冷たい瞳で沖田を睨み見た。
静かに吹く風が時折二人の剣士を包んでは消えた。
風が草木を揺らす中、沖田と風間は同時に踏み込んで斬撃へと転じたのだった。

三つ巴→←激戦へ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (309 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
402人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼 , アニメ , 岬鬼
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>なんだか、私のところで言う「エライ」に似てますね〜^^ 私のところも「エライすごい」で「とてもすごい」って意味になるんですよ〜 1mも積もる雪なんてお目にかかった事がないですよ! それだけ積もると、ちょっと怖いですね (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 姫百合さん» 姫百合さん>なかなか心の内を話さない主人公なので、ここまでくるのもなかなか大変でした(笑) 試練も二人で乗り越えてくれると信じてます!← なんにしろ、ここから最終章までが踏ん張りどころですね〜^^ (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 岬鬼さん» 「なまら」は確か[とても]という感じの意味だったと思うので「なまらスゴい」(とてもスゴい)という感じに… 私も行っててみたいものですw それくらいは積もるんじゃないですかね 私の家の庭は雪が積もっても放置しているのでいっつもスゴいことになっているんです;; (2015年3月3日 1時) (レス) id: dcc2cda9a3 (このIDを非表示/違反報告)
姫百合 - 何だかほんまにどんどん甘くなってきましたね〜^^試練があっても、二人なら乗り越えられるはずですよ♪← (2015年2月23日 12時) (レス) id: baac39ec53 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>いえいえ、テストお疲れ様です^^ 「なまら」は聞いたことありますよ!使い方は分かりませんが汗 そうなんですか!でも、一度は雪まつり行ってみたいです^^ 積雪1メートルは軽く超えるイメージがあるんですが、本当にそんなに積もるんですか? (2015年2月21日 21時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:岬鬼 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2014年4月1日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。