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相応の覚悟 ページ16

山南「この劇薬を飲んだ者に襲われて、君は何を思いました?」

小瓶を持ち上げながら山南は瞳に揺れ惑う光を宿す。
その反応は確信に触れたのだと悟り、彼は形の良い唇を震わせた。

貴女「驚きました。
あの剛腕、何より目を見張る様な回復力は利用できると大きな力になりますね。
けども、あれは人ではなく“獣”です。」

山南「・・君はよくわかっていますね。
ならば、私がこの劇薬を使うとしたらどうしますか?」

フッ、と怪しげに微笑んだ山南は更に問いを重ねた。
Aは明眸を隠微に細め、雨で鋭く機敏に動く千里眼で山南の心に入り込んだ。

貴女「それ相応の覚悟なら、私は尊重します。」

千里眼と現実の狭間に立つと、時折どちらが現実なのか分からなくなる事がある。
そのギリギリの線を踏まえている彼は神経を尖らせながら、そのギリギリを見定めた。
山南がこの薬を飲むきっかけとなった事件は、大阪出張での左腕負傷。
斬り合いに身を投じる山南と土方が視える。
まるで自分がそこにいる様な感覚に陥り、そこで彼は千里眼を閉じた。

貴女「あの様に・・、狂ってまで左腕を治したいですか?」

『左腕』と言う言葉に山南は過剰に反応をする。
目を見開き驚愕するが、以前話した千里眼の存在を思い出したかの様に自虐的に微笑む。

山南「これは『変若水』といいましてね。
君が見た“獣”は『羅刹』といい、人ではありません。
これは私なりに手を加えて、理性を保てる様に改良しました。
調合に成功していれば私の腕も治るかも知れません。」

貴女「成功していれば・・・か。」

小声で呟き、彼は考える様な素振りを見せる。
机に凭れかかり、気怠そうに虚空を見つめた。
だが、それはAの偽装。
そうしながら、後ろでに右手を回して机に置かれた幾つもの小瓶の一つを袴の中に隠した。

貴女「悩んでいるなら、もう少し考てみるといいよ。
今日聞いた事は他言しません。
それじゃあ、おやすみなさい山南さん。」

小瓶を隠し持つと、彼は襖を開けて雨の中を八木邸へ戻っていった。
湿気の多い風が何度も頬を撫で、雨は藍の髪をぬらして艶やかに彩る。
長い睫に落ちた雫は彼の瞬きと同時に、涙の様な光を宿して地面に落ちていった。
残された山南は机に置かれた変若水の数を見て、苦笑する。

山南「それ相応の覚悟ですか・・」
全く手厳しい。」

苦笑は自嘲に変わり、山南は赤い液で満たされた小瓶を机に戻した。

羅刹の気配→←確信へ



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岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>なんだか、私のところで言う「エライ」に似てますね〜^^ 私のところも「エライすごい」で「とてもすごい」って意味になるんですよ〜 1mも積もる雪なんてお目にかかった事がないですよ! それだけ積もると、ちょっと怖いですね (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 姫百合さん» 姫百合さん>なかなか心の内を話さない主人公なので、ここまでくるのもなかなか大変でした(笑) 試練も二人で乗り越えてくれると信じてます!← なんにしろ、ここから最終章までが踏ん張りどころですね〜^^ (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 岬鬼さん» 「なまら」は確か[とても]という感じの意味だったと思うので「なまらスゴい」(とてもスゴい)という感じに… 私も行っててみたいものですw それくらいは積もるんじゃないですかね 私の家の庭は雪が積もっても放置しているのでいっつもスゴいことになっているんです;; (2015年3月3日 1時) (レス) id: dcc2cda9a3 (このIDを非表示/違反報告)
姫百合 - 何だかほんまにどんどん甘くなってきましたね〜^^試練があっても、二人なら乗り越えられるはずですよ♪← (2015年2月23日 12時) (レス) id: baac39ec53 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>いえいえ、テストお疲れ様です^^ 「なまら」は聞いたことありますよ!使い方は分かりませんが汗 そうなんですか!でも、一度は雪まつり行ってみたいです^^ 積雪1メートルは軽く超えるイメージがあるんですが、本当にそんなに積もるんですか? (2015年2月21日 21時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:岬鬼 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2014年4月1日 23時

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