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確信へ ページ15

あの日から降った雨は三日三晩降り続けると、ようやく雲間に垣間見える太陽を覗かせた。
雨は千里眼を使う霊能力者には都合がいい。
水は反響しやすく、千里眼を開くと反響を利用して普段よりも強く広い範囲の世界を視る事が出来るのだ。
もちろん、霊力や精神の消費は晴れの日の半分以下。

『君の得意な雨ですね。』

伊東が彼に言った言葉は、つまりそういう意味だ。

草木を湿らす水滴はポタリと軽い音を立てて真下の水溜りに波紋を作った。
一度、青空を見せた天だったが、それは夕暮れと共に再び雲に覆い隠された。
夜には、また雨が降り出したのだ。


貴女「じゃあね千鶴ちゃん。
おやすみ。」

千鶴「はい、おやすみなさい。」

Aと千鶴は今日一日を終えると、彼の部屋の前で別れを告げた。
Aの部屋よりも奥に部屋を構える千鶴は、ニッコリ微笑んで更に奥へと姿を消してゆく。
そんな彼女の素直な行動に彼は苦笑し、静かに気配を潜めた。
Aの部屋は斎藤と沖田に挟まれた狭い物置の様な場所である。
少しでも不穏な動きをすれば、弩に弾かれたかの様な勢いで二人は駆けつけるのだ。
故に、彼は気配を潜める事で二人の動きを制限させた。

貴女「けど・・」

今日はまだすべき事があるらしい。

千里眼に写る怪しい人影にAは刀を腰に挿して部屋を抜け出した。
Aは主要である八木邸の門を出ると、向いにある前川邸の門を潜った。
ここは近藤達が必要に出入りを禁ずる場所。
A自身、ここに何があるかなんて薄々感じてはいたが、あえて無粋な真似をしなかっただけだ。
息を潜め、雨で機敏に動く千里眼を頼りに一つの部屋に辿りつく。

貴女「・・・・。」

おもむろに襖を開け、部屋に入ると机には小さな瓶に入った赤い液体を幾つも置いてあった。
禍々しい気配を感じながら、それに見入っていると、

山南「君は確か、それを飲んだ者に襲われたらしいですね。」

貴女「!?」

背後には山南が薄笑いを浮かべてそこに立っていた。
気配に気づかなかった自分を叱咤し、彼は机から一歩離れると山南は机へ近づいた。
入り口から僅かに入ってきた湿気の多い風が妙に肌に纏わりつき気持ちが悪い。

山南「この劇薬を飲んだ者に襲われて、君は何を思いました?」

恐らく・・、京に訪れた日に出会ったあの赤い眼の“獣”の事であろう。
やはり、この前川邸には“獣”の秘密が隠されている。
予測が確信に変わると、彼は形の良い唇を震わせた。

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岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>なんだか、私のところで言う「エライ」に似てますね〜^^ 私のところも「エライすごい」で「とてもすごい」って意味になるんですよ〜 1mも積もる雪なんてお目にかかった事がないですよ! それだけ積もると、ちょっと怖いですね (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 姫百合さん» 姫百合さん>なかなか心の内を話さない主人公なので、ここまでくるのもなかなか大変でした(笑) 試練も二人で乗り越えてくれると信じてます!← なんにしろ、ここから最終章までが踏ん張りどころですね〜^^ (2015年3月3日 19時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 岬鬼さん» 「なまら」は確か[とても]という感じの意味だったと思うので「なまらスゴい」(とてもスゴい)という感じに… 私も行っててみたいものですw それくらいは積もるんじゃないですかね 私の家の庭は雪が積もっても放置しているのでいっつもスゴいことになっているんです;; (2015年3月3日 1時) (レス) id: dcc2cda9a3 (このIDを非表示/違反報告)
姫百合 - 何だかほんまにどんどん甘くなってきましたね〜^^試練があっても、二人なら乗り越えられるはずですよ♪← (2015年2月23日 12時) (レス) id: baac39ec53 (このIDを非表示/違反報告)
岬鬼(プロフ) - 白夜さん» 白夜さん>いえいえ、テストお疲れ様です^^ 「なまら」は聞いたことありますよ!使い方は分かりませんが汗 そうなんですか!でも、一度は雪まつり行ってみたいです^^ 積雪1メートルは軽く超えるイメージがあるんですが、本当にそんなに積もるんですか? (2015年2月21日 21時) (レス) id: 6217ec00b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:岬鬼 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2014年4月1日 23時

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