救いの両手を差し伸べられるなら。２

救いの両手２５ ページ2

「＿＿＿入り給え」

「失礼します、首領」


中に入ると、首領は優雅にワインを飲んでいた。

あーあ、俺も飲みてェな


「それで、何か判ったかね？」

「部下を使ったり、俺自身でも調べ尽くしましたが、何も。戸籍も住所も普通です。」


「………そう。君から見たA君は如何映る？」

「……………彼奴が嘘を付いている様には見えませんでした。しかし、住所や自分の生まれに点いては覚えていないと」

「ふぅん、記憶喪失と云う処かな？君とA君が初めて会った時、何か訳が判らない言葉を呟いて倒れたそうじゃないか」


鋭く突き刺さる、探る様な首領の目。


殺気にも似た威圧が漂う。




「………俺の異能力名に関与している事だとは思いましたが、それ以外は全く判りませんでした。＿＿＿恐らく彼奴の異能の内かと」



そう云うと一瞬目線が更に鋭くなり、ふっと緊張感が和らいだ。

首領が殺気を解いたらしい。


もう聞きたい事は無ェって事だ。

「そっかぁ、じゃあまた何か判った事が有れば、随一報告してくれ給え」


「御意。失礼致します」


そう云われて首領の部屋から出る。


栫A、ねェ。


�牘�れっちまった悲しみに、今日も小雪の降りかかる、汚れっちまった悲しみに、今日も風さえ吹きすぎる��


あれは如何云う意味何だろうか。


汚れつちまつた悲しみには俺の異能力名だ。



｢彼奴は何を隠してんだ……？何者なんだ、栫Aは」

救いの両手２６→←救いの両手２４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す