51.気絶したら担架で運びます。 ページ6
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気付くと、私はどうやら気を失っていたらしい。
冷たい床の感触。
うっすらと見える景色は体育館のようだった。
『……う、頭痛い……』
「……起きたのか?」
少し心配そうに私の顔を見る赤司君に、大丈夫だよと笑って安心させる。
『……というか何で体育館に……』
頭を抑えながら見渡すと、皆は黙っている。
誰も喋らない。
どうしたの?と聞こうとすると。
「Aちゃんが体育館って言って、覚えてる?」
高尾君が私の顔を見て、少し控えめに聞いてきた。
何だか良く分からない。
体育館なんて私言ったっけ?
「A……」
続いて赤司君が私の名前を呼び、何か言いたそうにしていたけど、すぐに口を閉ざしてしまう。
『……?どうしたの?何かあったの?』
黙ったままの赤司君に、黒子君が「僕が言いますから大丈夫ですよ赤司君」と言葉で制して私の前に腰を下ろした。
「Aさん、あのですね。Aさんが気絶した後、色々な事が起きたんです。……あの時」
黒子君がぽつりぽつりと話し始める。
私が気を失った後に起こった様々な出来事。
……分からない、知らない。
黒子君は私とあの良く分からない奴らが一緒だって言うの?
そんな事ありえない。
学校がボロボロになった?化け物が消えた?
分からないって言ってるじゃん。
白羽ひまりちゃんなんて知らない。
先生なんて知らない。
やめて、やめて、やめて。
気付けば私は泣いていた。
「……すみません、少し話し過ぎましたね」
『……いいの、ごめん。私も訳分かんなくて……』
俯いて泣く。
他の皆は私を気遣ってか少し離れた場所に移動してくれた。
黒子君も、「赤司君、後は任せました」と皆の所へ行ってしまう。
その間に私の背中をさすってくれる赤司君。
しばらくして、私は泣きやんだ。
『……ありがとう、落ち着いた……』
「……そうか」
『……ねぇ、本当は赤司君、私に言いたい事あるんじゃない?』
「さっきの事か」
『……そう』
赤司君は一度黙った。
そして少ししてから私に向き直ると、真っ直ぐに私を見つめる。
「……A、今までの事を全て否定する訳じゃ無いんだが……」
私は黙って聞く。
「……だけど」
赤司君の声も、目も優しくて、おだやかなのに。
なのにどうして、赤司君が言った言葉は。
「A、君は本当に生きているのかい?」
あぁ、どうしてこんなにも、残酷なのだろう。
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神崎セルザ@復帰しました(プロフ) - 繚乱ノ銀夜桜さん» そう思って頂けるだけで私は幸せです!!!←そう思わせるのが当初の目的だったりするので笑 (2017年5月18日 15時) (レス) id: 98008e40b1 (このIDを非表示/違反報告)
繚乱ノ銀夜桜(プロフ) - これ凄い…第三者って私の事か!?ってなったwww (2017年5月7日 13時) (レス) id: 3246732b26 (このIDを非表示/違反報告)
エコロ - 良太よ、お主やりおるの。神崎殿がそう思われる程輝くとは・・・!!← うちは千尋一筋だ!!・・・が和成があざといのです。同じ状況ですよ、ハイ。本当声優凄いですよね〜!イケボです!! (2017年4月5日 17時) (レス) id: 41909b66f3 (このIDを非表示/違反報告)
神崎セルザ@復帰しました(プロフ) - エコロさん» 黄瀬君に惚れそうになって、危ない!私は赤司様一筋よ!と何度なった事か……笑 声優さんはもう本当みんな声がイケボすぎてむしろ怖いですよね笑 (2017年4月3日 15時) (レス) id: 98008e40b1 (このIDを非表示/違反報告)
エコロ - はい、黄瀬が輝いてました。とっても良い意味で、です。うちも声優好きですよ! (2017年3月31日 23時) (レス) id: 41909b66f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神崎セルザ@復帰しました | 作成日時:2017年1月5日 12時