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152話 ページ3

「…」



酔っていたはずなのに、さっきの真ちゃんの一言が頭から離れない


そういえばあの日、勝手に帰って以来話していなかったし
どうして急に私と話がしたくなってくれたのかわからないけど
横で歩く彼の顔はいつもと同じ、余裕のある大人の顔だった


「…ねぇ、真ちゃん」


少し華やかな商店街を2人で歩いて、タクシーを探すために駅に向かっている

傘の上で雨粒が踊って
普段なら憂鬱な雨も今日は少し気分がいいかもしれない

「…なんだ」

今日はなにか、特別なことが起きているのかもしれない


「この間、…勝手に帰ってごめんね」


私はそう呟くと、後ろめたさから段々と顔を下げてしまった

あの時は、もうこれ以上迷惑をかけないと心に誓ったつもりで
あの時は、もう会わないと覚悟を決めたつもりだった


「まあ、気にしていないといえば嘘になるが、…お前の気持ちもわかるのだよ」

視界に映る並んだ足元は、まるで親子の様な差があって
大きくなれば自然としんちゃんと同じくらいの目線で話せると思っていた子供の頃と、私は何も変わっていないじゃないかと笑ってしまいたくなる


「…あのね、私も、」



「…真ちゃんに伝えたいこと、たくさんあるよ」

そう口にしたと同時にまた少しふわりと体が揺れて
私は咄嗟に真ちゃんの腕にしがみついた


「…お前、相当飲んだな、」

なんだか今日は少し離したくなくて
私は傘を持っていない右手を真ちゃんの腕にするりと絡み付ける

「…えー、ちゃんと歩けてるんだから良くない?」


少し甘い、とろっとした声で口にして
そんな私の声を真ちゃんはまた鼻で笑い飛ばす

「意識飛ばさずにフラフラしてるというのは、いわゆる悪酔いなのだよ」

言葉では冷たいことを口にしつつ
真ちゃんはそのままそっと掴まれた左腕を軽く持ち上げる

暑かったかな、嫌だったかな、と少し不思議に思いながら私がそっと腕を解くと

真ちゃんはそんな私の右手を

やさしく、左手で包み込んだ


ブワッと熱くなる顔と、緊張でどれくらいの強さで握ればいいかわからない手に、感情全てを支配されていく様だ


「…、、」



「…今日は、このまま俺のうちに帰ってもいいか?」

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チョコドーナツ(プロフ) - 更新停止……ですか!!??先が気になりすぎて……そして真ちゃん可愛いし最高ですありがとうございます (4月7日 1時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
M - 忙しくて、ずっと読めてませんでした。すみませんm(_ _)m黄瀬くんの方も楽しみにしてます(*^^*)頑張ってください! (2021年6月15日 10時) (レス) id: d11a777a3f (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - Mさん» ありがとうございます( ; ; )そろそろ黄瀬くんのほう書かないと!!!! (2021年5月29日 10時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
M - はい、、、クライマックス、近づいておりますね、、、あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーー。もうダメです。ショートします。( ゚∀゚)・∵. グハッ!!良すぎです。続編きましたが、早いですね。お忙しいと思いますが、頑張ってくださいm(_ _)m (2021年5月28日 13時) (レス) id: e87ddeca49 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りん | 作成日時:2021年5月28日 9時

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